2022年もあとわずか。アストロピクスでは今年も宇宙・天文、太陽系関連のさまざまな画像を紹介してきました。今年、アストロピクスで紹介した画像を中心に、2022年に起きた宇宙・天文関連の話題を振り返ります。
天文
銀河系中心の超巨大ブラックホール
5月、天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホールをとらえた画像が公開されました。明るいリング状の構造に縁取られたブラックホールシャドウが映し出されています。世界各地にある8つの電波望遠鏡をつなぐことで地球サイズの仮想的な望遠鏡を作る「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」によって撮影されたものです。EHTによる銀河中心の巨大ブラックホールの撮影は、楕円銀河M87の巨大ブラックホールに続いて2例目でした。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
2021年12月25日に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、今年1月24日には観測場所となる太陽-地球系の第2ラグランジュ点(L2)を回る最終軌道に投入されました。その後、機器の調整や観測機器の試運転を経て、7月11日〜12日に最初のフルカラー画像を公開。7月11日に、アメリカのバイデン大統領によって先行して銀河団の画像が1枚公開され、翌12日にその他の画像や分光データなどが公開されました。それ以降、素晴らしい画像や科学的成果が次々に公表されています。
参考:
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた2022年のベストショット10
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡関連の記事一覧
天文現象
月食
11月8日、皆既月食と天王星食が同時に見られるということで大きな話題になりました。参考:皆既月食と天王星食 国立天文台が撮影
日本は昼間だったため見ることができませんでしたが、5月16日には南北アメリカやヨーロッパ、アフリカの一部などで月食が見られました。この画像は、その時の月食をISS(国際宇宙ステーション)から撮影したものです。参考:ISSから見た月食(2022年5月)、2022年に起きた2度の皆既月食の月を比較
火星の日食
4月と12月には、火星で起きた日食の画像や映像を紹介しました。この画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車パーサヴィアランスが4月2日に撮影した、衛星フォボスによる日食です。その他、11月18日に撮影されたフォボスによる日食や、12月5日に撮影された衛星ダイモスによる日食をパーサヴィアランスがとらえた画像(映像)も紹介しました。
参考:パーサヴィアランスがとらえた火星の日食(2022年4月2日)
太陽系
ベピコロンボの2回目の水星フライバイ
6月23日、日欧共同の水星探査ミッション「ベピコロンボ」が水星での2回目のフライバイを行いました。映像は、その際に撮影した56枚の画像をつなぎ合わせた動画です。Credit: Image: ESA/BepiColombo/MTM, CC BY-SA 3.0 IGO; Music composed and performed by Anil Sebastian and Ingmar Kamalagharan.
参考:
ベピコロンボの2回目の水星フライバイ時の映像公開!
ベピコロンボの2回目の水星フライバイ時にとらえた初画像が公開された
ベピコロンボが2回目の水星フライバイで撮影した水星画像(続報)
キュリオシティ火星着陸10周年
8月には、NASAの火星探査車キュリオシティが火星着陸10周年を迎えました。画像は、キュリオシティの着陸10周年を記念してNASAが制作したポスターです。キュリオシティは着陸以来、ゲール・クレーターとその中央にある高さ5kmのアイオリス山(シャープ山)のふもと付近の探索を行ってきました。10年を経た今もなお活躍中です。
DARTの小惑星衝突
9月27日8時14分(日本時間)、NASAの探査機DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験機)が、ターゲットの小惑星への衝突に成功しました。DARTは、探査機を衝突させて小惑星の軌道を変える技術の実証実験を行うことが目的のミッション。DARTが衝突したのは、小惑星ディディモス(直径780m)の周りを回る直径160mの小惑星ディモルフォスです。画像は衝突11秒前、約68kmの距離からとらえたディモルフォス。
ジュノー、エウロパ最接近
9月29日18時36分(日本時間)、NASAのジュノー探査機が木星の衛星エウロパの表面から352kmまで最接近しました。高度500km以下までエウロパに接近したのは史上3回目です。今回の高度(352km)までエウロパに接近したのは、2000年1月3日にNASAのガリレオ探査機が351km以内まで接近して以来のことでした。
ルーシー探査機、地球フライバイ
木星のトロヤ群小惑星の観測を目指すNASAの探査機ルーシーが、10月16日に地球でフライバイを行いました。画像は地球に接近中の10月15日に62万kmの距離から地球をとらえたものです。木星軌道に向かうため、ルーシー探査機は合計3回、地球でフライバイを行い、地球の重力を利用して加速します。今回は3回のうち最初のフライバイでした。
火星着陸機インサイト、ミッションを終了
NASAは12月21日、火星に着陸し地震(火震)や気象などの観測を行ってきた火星着陸機インサイト(InSight)のミッションを終了したと発表しました。インサイトの太陽電池パネルには塵が降り積り、電力は数か月前から低下していました。画像はインサイトが送信してきたラストショットです。インサイトは着陸から1222火星日目の5月4日には、地球以外の惑星で観測された最大の推定マグニチュード(M)5の地震を検出しました。
参考:火星着陸機インサイトのラストショット NASAは12月21日にミッション終了を発表、着陸機インサイト、過去最大規模の火星の地震を検出
宇宙開発
若田さん、ISS(国際宇宙ステーション)へ
10月6日1時00分(日本時間)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の若田光一さんを含む4人の宇宙飛行士が搭乗したクルードラゴン「エンデュランス」が打ち上げられ、翌7日6時01分にISS(国際宇宙ステーション)へドッキングしました。若田さんらは約半年間ISSに滞在し、2023年春に地上へ帰還する予定です。画像は月とともに映る、ISSへ接近中のクルードラゴン。
参考:
打ち上げ成功! 若田さん搭乗のクルードラゴン宇宙船
若田さん搭乗のクルードラゴン、ISSへ接近中の高解像度写真
アルテミス1ミッション成功
11月16日、月を目指すアルテミス1ミッションのSLS(Space Launch System)ロケットが、オリオン(オライオン)宇宙船を搭載して打ち上げられました。オリオン宇宙船は今回、「DRO(Distant Retrograde Orbit)」と呼ばれる軌道に投入され月を周回。12月11日に宇宙船のクルーモジュールがカリフォルニア沖の太平洋に着水し、ミッションを成功裡に終了しました。画像は飛行13日目の11月28日に、オリオン宇宙船の太陽電池アレイの先端に取り付けられたカメラで撮影されたものです。