ベピコロンボが2回目の水星フライバイで撮影した水星画像(続報) | アストロピクス

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ベピコロンボが2回目の水星フライバイで撮影した水星画像(続報)

日欧共同の水星探査計画「ベピコロンボ」が2022年6月23日に水星で2回目のフライバイを行いました。その際にモニタリングカメラ(MCAM)で撮影された画像のうち、最初に公開されたものはアストロピクスでも昨日紹介しましたが、24日に別の画像が追加で3枚、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)から公開されました。

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最接近約4分後、約800kmから撮影された画像

ベピコロンボは23日18時44分(日本時間、以下同じ)の最接近時には、水星表面から高度200kmまで接近しました。ただ最接近時にはベピコロンボは水星の夜側にいたため、最接近の約4分後の18時48分22秒に約800kmの距離から撮影されたこの画像が、フライバイ中に太陽光に照らされた水星表面をとらえた最初の画像です。

ベピコロンボは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)の水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)、電気推進モジュールMTM(Mercury Transfer Module)が結合した形で航行しています。

MTMに妨げられるため、フライバイの際には探査機のメインカメラでは撮影できません。フライバイ時の撮影は、MTMに設置されている3台のモニタリングカメラ(MCAM)を使って行われました。

上の画像はMCAM1で撮影されたもので、MTMの太陽電池パネルも映っています。

画像には水星のごく一部しか映っていませんが、太陽光が低い位置から当たっているため陰影が目立ち、地形がくっきりと映し出されています。Benoitクレーター(直径40km)などは、クレーターの縁に光が当たり内部は影で覆われています。

またEminescuクレーター(直径129km)から放射状に伸びる深い溝状地形もはっきりと見えています。これはクレーターができたときの噴出物によって形成された二次クレーターが狭い間隔で並んでいるものです。またEminescuクレーター内部が明るく見えていますが、これはクレーターが若いこととともに、水星に特有の地形である「Hollows」と呼ばれる明るい窪みがクレーターの中央丘のまわりに多く存在しているためです(参考記事:水星にある謎の窪地「Hollows」)。

Eminescuクレーターの右の方では、Xiao Zhaoクレーターが形成されたときの噴出物が明るく見えています。

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最接近約7分後、1406kmから撮影された画像

こちらは最接近から約7分後の18時51分7秒に、高度1406kmからMCAM3で撮影された画像です。探査機の高利得アンテナなども映っています。水星表面はクレーターが非常に多い地域が見えています。

この画像にはいくつかのクレーターの名前が示されています。これらのうちHeaneyクレーター(直径125km)の内部は滑らかな火山性平原に覆われています。これは水星での火山の候補となっている珍しい例で、周回軌道投入後のベピコロンボの重要な観測ターゲットの一つになっています。

Amaralクレーター(直径105km)は、はっきりとした縁と中央丘をもっており、周辺にはクレーター形成時に飛び散った物質が再衝突した際にできた二次クレーターが点在しています。水星の新しいクレーターの周囲にはよく見られるものです。

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最接近約11分後、2862kmから撮影された画像

こちらはMCAM2でとらえた画像で、最接近の約11分後、2862kmの距離から撮影されました。左下から右上に伸びる磁気センサーや、画面右下に見える中利得アンテナなどが映っています。

この画像には、「カロリス盆地」と呼ばれる水星最大の衝突盆地が水星の縁近くに映っています。カロリス盆地は約39億年前に形成された直径1550kmの巨大クレーターで、内部は溶岩に覆われた火山性の平原になっています。

カロリス盆地の内部の反射率は周辺より高く(明るく)なっています。盆地の内と外の溶岩の組成の違いを探ることもベピコロンボの目的の一つになっています。

Atgetクレーター(直径100km)はカロリス盆地の内部にあるクレーターです。暗く見えているのは、隕石衝突の際に地下にある反射率の低い(暗い)物質を掘り起こしたためと考えられています。

Xiao Zhaoクレーター(直径24km)の周囲に噴出物が広がっているのが、この画像ではよく分かります。Raditladiクレーター(直径258km)には「ピークリング」と呼ばれる環状の山が見られます。

ベピコロンボのフライバイは合計9回行われます。これまで地球で1回、金星で2回、水星で2回のフライバイが行われました。あと4回、水星でのフライバイを行った後、2025年に水星の周回軌道に入ることになっています。

Image Credit: ESA/BepiColombo/MTM, CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA