日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV-9)は2020年8月19日(日本時間、以下同)にISS(国際宇宙ステーション)から分離し、20日に大気圏に再突入する予定です。ここでは、これまでアストロピクスで紹介した記事や画像をもとに、打ち上げ以降の「こうのとり」9号機を振り返ります。
「こうのとり」9号機は2020年5月21日2時31分にH-IIBロケット9号機で打ち上げられました。25日21時13分にISSのロボットアームでキャッチされ、26日3時25分にISSとのドッキングを完了しました。この写真は5月25日に撮影されました。→「こうのとり」最終便。ISS接近中の高解像度写真が公開
なお「こうのとり」9号機がISSに近づく際には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「WLD(Wireless LAN Demonstration、ワイルド)」という実証実験に成功しました。これは「こうのとり」で撮影した映像を、無線LANを使ってISSにリアルタイムで伝送する実験です。→世界初! 「こうのとり」とISSの間で無線LANによる動画の伝送に成功
この写真はISSへのドッキング後の5月30日に撮影されたものです。写真中央付近には補給キャリア非与圧部に収納された曝露パレットが映っており、「HTV9」という文字が見えています。この曝露パレットには、ISS用の新型リチウムイオンバッテリーが搭載されていました。→「こうのとり」9号機、ISSドッキング後の高解像度写真
「こうのとり」9号機は、ISSの「ハーモニー(第2結合部)」というモジュールにドッキングしました。ハーモニーにはもともと日本実験棟「きぼう」が取り付けられており、この写真には「きぼう」も映っています。6月1日に撮影された写真です。→ISSの「きぼう」と「こうのとり」9号機を収めた高解像度写真
こちらは6月2日に撮影された写真です。補給キャリア非与圧部から曝露パレットがなくなっています。→ISSに結合中の「こうのとり」9号機(2020年6月1日撮影)
6月4日に撮影された写真です。補給キャリア非与圧部に曝露パレットが再び収納されています。ただよく見ると「HTV8」と書かれていることが分かります。これは前回の補給ミッションで「こうのとり」8号機がISSに運んだもので、2019年末に行われた船外活動でISSから取り外された古いニッケル水素バッテリーが収納されています。→ISSに結合中の「こうのとり」9号機(2020年6月4日撮影)
夜明けの地球と「こうのとり」9号機。6月21日に撮影された写真です。
「こうのとり」9号機がISSに結合中の6月21日には日食が起きました。これは月が地球に落とした影を、中国上空のISSから撮影した写真です。→日食時に地球に落ちた月の影をISSからとらえた
5月末には2人の宇宙飛行士を乗せたスペースX社のクルー・ドラゴンも、「こうのとり」9号機と同じハーモニー・モジュールにドッキングしました。この写真は船外活動中のクリストファー・キャシディ飛行士が6月27日に撮影したものです。→船外活動中に撮影された「こうのとり」とクルー・ドラゴン
2度目の船外活動が行われたときにも、「こうのとり」9号機とクルー・ドラゴンのツーショットが撮影されました。7月1日に撮影。→「こうのとり」9号機とクルー・ドラゴン、両者が映った新たな写真
「こうのとり」9号機が宇宙にいる間、ネオワイズ彗星(C/2020 F3)も話題になりました。この写真には「こうのとり」9号機とともにネオワイズ彗星が映っています。7月6日に撮影された写真です。→「こうのとり」や「きぼう」とともに映るネオワイズ彗星
アメリカ、テキサス上空で撮影された「こうのとり」9号機。7月1日に撮影された写真です。
日本海上空で撮影された「こうのとり」9号機。7月13日、小笠原諸島の西之島の噴煙と思われるものも映っています。
ウユニ塩湖とともに映る「こうのとり」9号機。7月15日、南米ペルー上空から撮影された写真です。
ニュージーランド南西海上の上空で撮影された「こうのとり」9号機。7月25日に撮影された写真です。
ISSから見た「こうのとり」9号機と月。写真中央やや右に月が小さく映っています。8月1日に撮影。
こうして振り返ると、日食があったりネオワイズ彗星が接近したり、またクルー・ドラゴンがドッキングしたりと、「こうのとり」9号機の結合中にはさまざまなことがありました。
「こうのとり」の運用は今回の9号機で終了します。現在、2021年度の打ち上げに向けて後継機HTV-Xの開発が進められています。