2023年7月1日に打ち上げられた、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のユークリッド宇宙望遠鏡の最初のカラー画像が11月7日に公開されました。画像はそのうちの1点で、球状星団NGC 6397が映っています。
球状星団は数万〜数百万の星が重力で球状に集まった星団です。NGC 6397は約7800光年の距離にあり、地球から2番目に近い球状星団です。画像に映るNGC 6397の星々の大きさや色はさまざまです。青い星は比較的若く、赤い星は比較的古い星です。
球状星団は非常に古い天体です。そのため、親銀河(NGC 6397であれば天の川銀河)の歴史について多くの手がかりを含んでいます。ただ球状星団を一度に観測するのは通常は困難です。
球状星団全体を1回の観測で撮影し、かつ星団内部の多くの星々を見分けられる望遠鏡はユークリッド以外にはありません。球状星団の中央部には非常に多くの星が集まっていて明るく、暗い星を見えにくくしてしまいます。球状星団の周縁部は遠くまで広がっており、そこには主に低質量の暗い星が存在しています。
NGC 6397については、ハッブル宇宙望遠鏡が観測したこともあります。ただハッブル望遠鏡で周縁部を撮影しようとすると非常に多くの観測時間が必要になります。しかしユークリッド望遠鏡は、わずか1時間で完了しました。(参考記事)地球に近く、非常に古い球状星団「NGC 6397」 ハッブル望遠鏡が撮影
こちらは冒頭の画像の一部をクローズアップしたものです。
11月7日に公開されたユークリッド望遠鏡の最初のカラー画像については、以下の記事もご覧ください。
2024年の早い時期から本格観測をスタート予定
7月に打ち上げられたユークリッド望遠鏡では現在、太陽・地球系の第2ラグランジュ点(L2)で本格的な科学観測に向けた最終調整が行われています。2024年の早い時期から本格観測を開始する予定です。
L2は、地球からみて太陽の反対側、約150万km離れたところにあります。ユークリッド望遠鏡は、L2を周回する軌道から、全天の3分の1の領域について、100億光年先までの銀河の形状や位置、距離などを測定し、宇宙の3Dマップを作成します。
(参考記事)ユークリッド宇宙望遠鏡 銀河の精密な3Dマップを作り宇宙の「暗黒」の解明を目指す
Image Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi, CC BY-SA 3.0 IGO
(参照)ESA