2024年5月、Xクラスの大規模な太陽フレアが頻発し、地球で低緯度オーロラが見られたことが話題になりました。その活発な太陽活動が影響を与えたのは地球だけではありませんでした。NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車キュリオシティや探査機メイブン(MAVEN)などが、火星表面と上空から太陽の激しい活動の影響を観測しました。
5月20日、のちにX12と推定された太陽フレアが発生しました。フレアは火星に向けてX線とガンマ線を放出し、その後のコロナ質量放出(CME)で荷電粒子が放出されました。X線の強度によって分類されているなかで、「X」は最も大規模な太陽フレアです。またアルファベットの後の数字が大きいほど規模が大きいことを示しています。
探査車キュリオシティが検出した放射線は着陸以来最大だった
NASAによれば、荷電粒子が火星に到達した際、もし宇宙飛行士がキュリオシティの近くに立っていたとしたら、胸部X線39枚分に相当する8100マイクログレイの放射線を浴びたことになったとのことです。キュリオシティが火星に着陸して以来、搭載機器の一つRAD(放射線評価検出器)が検出した放射線は最大となりました。このようなデータは、将来の火星有人探査にも役立つことになります。
この画像は、キュリオシティが5月20日にナビゲーションカメラで撮影したものです。カメラに荷電粒子が当たったことで、撮影した画像に白い筋や斑点が生じました。
周回機メイブンはオーロラを観測
キュリオシティが火星表面で観測を行う一方、メイブンは周回軌道からオーロラをとらえました。地球は強力な磁場によって荷電粒子から保護されており、オーロラが見られるのは通常は極地方に限られます。しかし火星では遠い昔に磁場が失われており、荷電粒子が火星の大気に衝突して惑星全体を包み込むようなオーロラが発生します。
画像の紫色の部分は、メイブンのIUVS(紫外線撮像分光器)で検出された、火星の夜側のオーロラを示しています。
周回機マーズ・オデッセイもX線などのデータを収集
またNASAの火星周回機2001マーズ・オデッセイは高エネルギー中性子検出器を使い、X線やガンマ線、荷電粒子に関するデータを収集しました。一方でマーズ・オデッセイでは、探査機の向きを知るためのスターカメラが一時的に機能しなくなったとのことです。
なお2001年から観測を続けるマーズ・オデッセイは、2003年にX45と推定された大規模な太陽フレアからの荷電粒子に見舞われたことがあります。その際には、探査機の火星放射環境試験装置(MARIE)が壊れてしまいました。
(参照)JPL