ハッブルが月を“鏡”にして地球大気から生命の痕跡を観測! 将来の系外惑星大気の観測へ向けて

ハッブル宇宙望遠鏡が月に向けられました。2019年1月の皆既月食時のことです。この観測は月を“鏡”として使ったもので、ハッブル宇宙望遠鏡は地球の大気からバイオシグナチャー(生命存在指標)となるオゾンを検出しました。これは、太陽系外惑星の大気でバイオシグナチャーを探る方法をシミュレートするものです。

ハッブル宇宙望遠鏡は、地球の大気層を通過した太陽光が月面に当たって反射した光を観測しました。似たような観測が地上から行われたことはありますが、皆既月食時に紫外線波長で宇宙望遠鏡からとらえられたのは初めてのことです。宇宙からは、地球の大気の影響を受けずに観測が可能です。

ハッブル宇宙望遠鏡は、オゾンの強い吸収線を検出しました。地球では、数十億年にわたる光合成によって、高い酸素濃度と厚いオゾン層が形成されてきました。そのことが、オゾンや酸素をバイオシグナチャーと科学者が考える理由の1つです。ただオゾンは生命とは関係なく生成されることもあります。生命存在を探るには、いくつものバイオシグナチャーを組み合わせることが必要です。

太陽系外惑星が主星の前を通過すると、惑星に大気があれば主星の光がその大気を通過して地球に届きます。今回ハッブル宇宙望遠鏡が行なったように、その光を分析することでバイオシグナチャーを探ることができます。ただそのためには、より大型の宇宙望遠鏡が必要です。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡など、将来の大型宇宙望遠鏡の準備のため、今回、生命の存在が知られている唯一の惑星である地球を使って実験が行われたのです。

Image Credit: M. Kornmesser (ESA/Hubble), NASA, and ESA

(参照)NASA