ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが火星で2万5000周回したことを記念して、火星の巨大火山が連なるタルシス地域を中心とする広大な領域が映る画像が公開されました。
画像中央付近で斜めに連なるのは「タルシス三山」とも呼ばれる3つの火山で、右上からアスクレウス山、パボニス山、アルシア山です。その左上の方には火星最大、そして太陽系でも最大といわれる巨大火山オリンポス山が見えています。そのほかにもアルバ山、ジョビス・トーラス、ユリシーズ・トーラス、ビブリス・トーラスなどの火山も映っています。
タルシス三山の右下には、峡谷が交差する「ノクティス・ラビリントス」と呼ばれる地域があります。オリンポス山の上側に見られる「Lycus Sulci」という領域は、オリンポス山のふもと付近で発生した大規模な地滑りによって形成されたとみられています。画像右上にある「タンタロス・フォッサ」は、多くの溝状の地形からなります。
(参考記事)「火星最大の火山オリンポス山の麓が崩壊して生じた地滑り跡」「火星の巨大火山の周囲にある溝状地形『タンタロス・フォッサ』」
画像左下には衛星フォボスが映り込んでいます。フォボスは火星の2つの衛星のうち内側を公転する衛星で、火星表面からわずか6000kmのところを周回しています。ちなみに地球の月は、地球表面から約38万5000kmのところを周回しています。
2003年6月に打ち上げられたマーズ・エクスプレスは、2003年末に火星に到着しました。それ以来、火星を周回しながら観測を続け、2023年10月19日に2万5000周回を達成しました。上で紹介した画像は、マーズ・エクスプレスの高解像度ステレオカメラHRSCで撮影されたデータをもとに作成されました。
クローズアップ&立体画像
オリンポス山のクローズアップ。裾野の直径は600km以上あります。山頂のカルデラだけでも富士山がまるごと入るくらい巨大です。(参考記事)火星の超巨大火山 オリンポス山
ノクティス・ラビリントスのクローズアップ。タルシス地域での火山活動に伴う地殻変動によって形成されました。(参考記事)マーズ・エクスプレスがとらえた火星の「夜の迷宮」
マーズ・エクスプレスによるデジタル地形モデルとカラー情報から作成された立体画像。画像中央にタルシス三山があり、奥にオリンポス山が見えています。タルシス三山は左からアルシア山、パボニス山、アスクレウス山。手前側にはノクティス・ラビリントスが映っています。
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO
(参照)ESA