この画像は、火星の「タンタロス・フォッサ(Tantalus Fossae)」と呼ばれる巨大な断層系の一部を、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスがとらえたものです。画面左上から右下にかけて、多くの溝状の地形が映っています。
火星のタルシス高地にある巨大な楯状火山アルバ山の周辺には「フォッサ」と呼ばれる地形(フォッサは空洞や陥没を意味します)が多数存在しており、タンタロス・フォッサはその一部でアルバ山の東側にあります。アルバ山の標高が上がり、周囲の地表がゆがんだり引き伸ばされたり、また崩壊したりしたことによってフォッサが形成されました。
タンタロス・フォッサは「グラーベン(地溝)」と呼ばれる地形の好例です。グラーベンは、ほぼ平行する2つの断層の間にできた溝です。なおアルバ山の西側にも似たような地形が弧を描くように存在しています。アルバ山に関連するグラーベンは、長さ1000km、幅10km、深さ350mに及びます。
画像中央左に見える大きなクレーターの内部にはグラーベンが見られることから、このクレーターはタンタロス・フォッサができる前から存在していたことがわかります。そのクレーターの左下側、画面内で2番目に大きな(とはいえかなり小さいですが)クレーターは、溝状地形の上にあるように見えることから、タンタロス・フォッサより新しいと推測できます。
こちらはいちばん大きなクレーター付近を斜めから見た画像です。マーズ・エクスプレスが取得したデジタル地形モデルと色情報から作られました。画面左上側に2番目に大きなクレーターも見えています。
こちらは別角度から見たタンタロス・フォッサです。
画像は2021年7月19日にマーズ・エクスプレスがとらえたもので、2022年4月28日にESAのウェブページで公開されました。
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO
(参照)ESA