NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星着陸機インサイトのデータから、火星の自転が年に4ミリ秒角ずつ加速していることがわかりました。これは火星の1日が年に1ミリ秒足らず短くなっていることに相当します。
研究には、インサイトの観測機器の1つである「RISE」のデータが使われました。NASAの深宇宙ネットワークからインサイトに向けて電波を送信すると、RISEは信号を反射して地球へ戻します。戻ってきた信号から、ドップラー効果によって生じる周波数のわずかな変化を測定することで、火星の自転速度の変化が決定されました。今回の研究では、インサイトの900火星日分のデータが調査されました。
加速の理由ははっきりしていません。ただ研究チームはその理由について、極冠への氷の蓄積などいくつかのアイデアがあるとのことです。
RISEのデータをもとに火星の核の半径も推定
RISEのデータは、火星の章動を測定するためにも使われました。章動とは、火星の自転軸の方向が比較的短い周期で変動する現象のことです。そしてその測定から火星の核のサイズが求められました。RISEのデータに基づく核の半径は約1835kmとなりました。インサイトの地震計から得られた核の測定値もあわせて、核の半径は1790〜1850kmと推定されました。なお火星そのものの半径は、地球の約半分の3390kmです。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech