木星を周回中のジュノー探査機、地球周回軌道のハッブル宇宙望遠鏡、ハワイにあるジェミニ望遠鏡が連携し、木星大気に関する新たな知見が得られました。
木星の雲の中では強力な雷が発生しています。雷からは可視光だけでなく電波も放射されます。ジュノー探査機は53日ごとに木星に最接近する際、雷によって生じる電波を検出します。それにより木星の昼側や、深い雲の中で発生している雷でもマッピングすることができます。
ハッブル宇宙望遠鏡のデータは、そびえ立つ塔の厚い雲の高さと、水からなる深層の雲の深さを示しています。ジェミニ望遠鏡のデータは、高層の雲が晴れていて深層の雲が見える領域を示しています。
研究チームは、ジュノー探査機によって検出された雷を、ハッブル宇宙望遠鏡の光学画像とジェミニ望遠鏡の赤外線画像にマッピングしました。そして、深層の水の雲、湿った空気の上昇によって生じるそびえ立つ巨大な雲、そしてそびえ立つ雲の外側で乾いた空気の下降によって生じると思われる雲のない領域という3つの組み合わせによって、雷が生じていることを示しました。
研究チームを率いるカリフォルニア大学バークレー校のMichael Wong氏は、雷は「折りたたまれたフィラメント領域(FFR:Folded Filamentary Regions)」と呼ばれるタイプの乱流領域でよく発生しており、その中で湿潤対流が起きていることを示唆していると考えています。「これらの低気圧性の渦は内部エネルギーの煙突のようなもので、対流を通じて内部エネルギーを放出するのを助けている可能性があります」とWong氏は述べています。
雷と深層の水の雲とを関連づけることは、木星大気の水の量を推定することにもつながります。大気中の水の量は、木星や土星などの巨大ガス惑星、また天王星や海王星などの巨大氷惑星の形成や、さらには太陽系全体の形成を理解する上でも重要です。
この画像の左上は冒頭の木星画像と同じもので、2017年5月19日にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された木星全体の可視光画像です。右のハッブルやジェミニ望遠鏡の画像の範囲が、オレンジ色の枠で囲まれています。
右上は、木星大気での雲の高さを示したハッブル宇宙望遠鏡の画像です。高度の高い雲は、可視光および近赤外光の複数の波長を反射して薄い色にみえています。深層の雲は光をあまり反射しないので暗くみえます。ジュノー探査機が検出した電波の検出に基づく雷の閃光は薄緑色で示されています。
ハッブル画像の下にあるのは、ジェミニ望遠鏡によって2017年5月21日に撮影された画像です。木星から放射された熱赤外光(4.7μm)を示しています。明るい領域は雲が薄くなっていることに対応しており、温かい深層の大気層から、より多くの熱放射が宇宙に逃げています。
下はジュノー探査機、ハッブル宇宙望遠鏡、ジェミニ望遠鏡のデータに基づいて描かれた図です。ハッブルとジェミニの画像にある白線部分に対応しています。ハッブルの画像にあるTはそびえ立つ雲、Wは深層の水の雲、Cは高層の雲の晴れ間を示しています。湿った空気が上昇しているところに厚くそびえ立つ雲が形成され、乾燥した空気が沈み込むところは雲の晴れ間になります。
Image Credit:(1枚目の木星画像)NASA, ESA, and M.H. Wong (UC Berkeley)、(2枚目の画像)NASA, ESA, M.H. Wong (UC Berkeley), A. James and M.W. Carruthers (STScI), and S. Brown (JPL)
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