火星の地下トンネルに続く縦穴 | アストロピクス

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火星の地下トンネルに続く縦穴

この画像は、火星にある火山エリシウム山の南東部の山腹にある、直径130mほどの穴を映したものです。NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影しました。エリシウム山は、火星の北半球、エリシウム平原にある火山です。

画像に見られるような穴は、地下の溶岩チューブ(溶岩洞)の天井が崩落して「天窓」があいたものだとみられています。溶岩チューブとは、地下で溶岩が流れた後に残される空洞で「溶岩トンネル」とも呼ばれます。画像にみられるような穴は「ピット・クレーター」とも呼ばれます。このようなピット・クレーターは通常、地質的に比較的若い火星のタルシス火山地域で見られます。画像に映るピット・クレーターは、比較的古いエリシウム火山地域で発見されたものの1つです。

周囲には隕石衝突によってできた衝突クレーターが見られますが、それらのクレーターは縁が盛り上がり、壁が傾斜しています。それに対してピットクレーターの壁はほぼ垂直で、また衝突クレーターと比べて直径の割に底が深く、太陽が高い位置にあるときしか底が見えません。アストロピクスで以前紹介した、タルシス地域のアルシア山の山腹にある穴の画像では、穴の底は影になって見えていませんでした。エリシウム山の山腹のこの画像の穴は、底面が見えています。

このような天窓は、地球以外では2007年に火星で初めて発見され、2009年には月でもみつかりました。

HiRISEのウェブページでは火星画像を毎日1枚ずつ、HiPOD(HiRISE Picture of the Day、HiRISEの今日の1枚)として紹介しています。この画像は2015年10月16日に撮影されたもので、2023年4月9日のHiPODとして紹介されました。

Image Credit: NASA/JPL/UArizona

(参照)HiRISE