2機のボイジャー探査機の寿命を伸ばす措置を実施

1977年に打ち上げられた双子の探査機ボイジャー1号と2号は現在、太陽圏を脱して星間空間を航行中です。NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術者は、2機の探査機の寿命を伸ばすべく、さまざまな取り組みを行っています。最近では、スラスターの動作を修正するコマンドを送信したり、昨年ボイジャー1号で発生した不具合の再発を防ぐためのソフトウェアパッチをアップロードしたりといったことが行われています。

星間空間を航行するボイジャー探査機の想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
星間空間を航行するボイジャー探査機の想像図。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
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スラスター噴射の頻度を減らすために

2機のボイジャー探査機のスラスターは主に、探査機の通信用のアンテナを地球に向けるために使われています。スラスター内では、外部の燃料ラインより25倍細いチューブを推進剤が通ります。そのチューブ内には、スラスターの点火のたびにごくわずかの残留物が残ります。打ち上げから46年が経過し、一部のチューブでは残留物の蓄積が顕著になっているものもあります。

ボイジャーミッションの技術者は、その蓄積を遅らせるため、スラスターを噴射する前のアンテナと地球との間の角度のずれの許容範囲をわずかに広げることにしました。それによりスラスターの噴射頻度を減らすことができます。

許容角度が大きくなると、科学データの一部がときおり失われる可能性があるようです。しかしミッション全体としては、ボイジャーがより多くのデータを返すことができるとミッションチームは結論づけたとのことです。

スラスター内の細いチューブが完全に詰まる時期を正確に予測はできないものの、今回の予防策によって少なくとも5年間は完全に詰まることにはならないとみられています。

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不具合再発を防ぐためのパッチを送信

ミッションチームはまた、2022年にボイジャー1号で発生した不具合の再発を防ぐためのソフトウェアパッチを、2機のボイジャー探査機にアップロードしようとしています。

昨年、探査機の姿勢制御に関わる「AACS(attitude articulation and control system)」というシステムの動作が正常なのにもかかわらず、探査機の状態を反映していないテレメトリデータが送られてくる不具合が、ボイジャー1号で発生しました。(参考記事)ボイジャー1号で生じていた問題を解決。ただし根本的な原因は不明

そのときの不具合は、AACSが適切でないコンピュータを介してテレメトリデータを送信したことが原因であることがわかり、問題は解決しました。ただどうして適切でないコンピュータにデータを送信するようになったのか、根本的な原因は特定できておらず、再発するかどうかはわかりません。ただミッションチームは、ソフトウェアパッチはそれを防ぐはずたとしています。

パッチによって重要なコードが上書きされたり、その他の予期しない影響が生じるリスクもあります。そのようなリスクを低減するため、チームは数か月かけてコードの作成やチェックを行ってきました。

現在、ボイジャー1号は地球から240億km以上、2号は200億km以上離れたところにいます。ボイジャー1号はどの探査機よりも遠方にいてデータの重要度が高いので、まずはボイジャー2号にパッチを送って試すことになっています。

コマンドが届くまで、ボイジャー1号は22時間以上、2号は18時間以上かかります。10月20日にパッチをアップロード。問題が生じなければ、28日にコマンドを送ってパッチが正常に動作しているかどうかを確認する予定になっています。

(参考記事)ボイジャー1号、2号の現在地は? 今どこにいるのか

(参照)NASA