ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが、貴重な瞬間をとらえた画像が公開されました。火星の衛星ダイモス(デイモス)が、木星とその4大衛星(ガリレオ衛星)の手前を通過するようすが撮影されたのです。
火星には2つの小さな衛星があります。内側のフォボスは火星からの平均距離が9376km、外側のダイモスは火星からの平均距離が2万3458kmあります。フォボスは徐々に火星へ近づいており、一方のダイモスは火星から遠ざかっています。
地球からみると、小さな衛星に対して火星が明るすぎるため衛星の軌道を測定することは困難です。ESAによれば、2022年2月14日に探査機から見てダイモスが木星と衛星の手前を通過したことで、ダイモスの位置や軌道をより正確に求めることができたとのことです。
アニメーションは80枚の画像から作られています。画像では木星は背景にある大きな白い円、4つの衛星は小さな点として見えています。木星の左には衛星エウロパとガニメデ、右にはイオとカリストが映っています。ダイモスはいちばん左のエウロパから順番に、衛星と木星を隠していきます。このような現象は、木星の衛星の軌道面とダイモスの軌跡が正確に一致していなければならないため、非常に珍しいことです。
画像の撮影時、マーズ・エクスプレスと木星との距離は約7億4500万kmもありました。これは太陽〜地球間の距離の5倍に相当します。
こちらの映像は、フォボスがダイモスを隠すところをマーズ・エクスプレスがとらえたものです。2022年3月30日、マーズ・エクスプレスがフォボスから12kmの距離にあるときに撮影された19枚の画像から作成されました。ダイモスまでの距離は約28km。
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin – CC BY-SA 3.0 IGO, K.-D. Matz
(参照)ESA