ウェッブ望遠鏡、初画像公開から1年間のベストショット10 | アストロピクス

【Googleニュースでアストロピクスをフォローして新着記事をチェック!】

ウェッブ望遠鏡、初画像公開から1年間のベストショット10

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、2022年7月12日に初のフルカラー画像が公開(1枚は前日に先行公開)されてから1周年を迎えます。その間、新たな画像や科学的成果が次々に発表されてきました。

ここでは最初の1年間に公開された画像から10点を厳選して紹介します。編集部の独断で選んだ10点です。なお木星、土星、天王星、海王星については先日まとめ記事を掲載しましたので、今回の記事はそれら以外の画像から10点を選びました。

スポンサーリンク

車輪銀河

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

その形から「車輪銀河」と呼ばれる銀河。ちょうこくしつ座の方向、約5億光年の距離にあります。かつて大きな渦巻銀河に、この画像には映っていない小さな銀河が高速で衝突した結果、車輪のような形になったと考えられています。画面左に映っている2つの小さな銀河は、車輪銀河の伴銀河です。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた「車輪銀河」

(参考記事)車輪銀河 ウェッブとチャンドラのコラボ画像

スポンサーリンク

宇宙の崖

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

カリーナ星雲の北西の隅にある星形成領域NGC 3324の一部。NGC 3324は、りゅうこつ座の方向、約7600光年の距離にあります。「宇宙の崖(Cosmic Cliffs)」とも呼ばれるこの領域は、NGC 3324にあるガス状の巨大な空洞の端の部分です。画像に映る光景は、画像外の上の方にある高温の若い巨大星からの強烈な紫外線と星風によって、ガスと塵の雲が侵食されてできたもの。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた星形成領域の「宇宙の崖」

(参考記事)星形成領域の「宇宙の崖」 ウェッブとチャンドラのコラボ画像ウェッブ望遠鏡が「宇宙の崖」で見た若い星々

スポンサーリンク

南のリング星雲

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

「南のリング星雲(NGC 3132)」と呼ばれる惑星状星雲。ほ座の方向、約2500光年の距離にあります。太陽程度の質量の恒星は、晩年になると赤色巨星を経て惑星状星雲になります。南のリング星雲の中心の星は連星系で、そのうちの1つが白色矮星です。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた「南のリング星雲」

(参考記事)ウェッブ望遠鏡がとらえた南のリング星雲とその形成シナリオ

創造の柱

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; J. DePasquale, A. Koekemoer, A. Pagan (STScI).
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; J. DePasquale, A. Koekemoer, A. Pagan (STScI).

わし星雲(M16)にある「創造の柱(Pillars of Creation)」と呼ばれる領域の画像です。わし星雲は、へび座の方向、約6500光年の距離にあります。わし星雲の中心部にある創造の柱は、大質量星からの紫外線や星風に耐えて残った、ガスと塵からなる柱状の構造です。創造の柱は、ハッブル宇宙望遠鏡が1995年に撮影して有名になりました。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた「創造の柱」

(参考記事)ウェッブ望遠鏡が中間赤外線でとらえた「創造の柱」ウェッブ望遠鏡がとらえた「創造の柱」(近赤外+中間赤外)

カシオペヤ座A

Image Credit: NASA, ESA, CSA, D. Milisavljevic (Purdue University), T. Temim (Princeton University), I. De Looze (UGent), J. DePasquale (STScI)
Image Credit: NASA, ESA, CSA, D. Milisavljevic (Purdue University), T. Temim (Princeton University), I. De Looze (UGent), J. DePasquale (STScI)

超新星残骸「カシオペヤ座A」。カシオペヤ座Aは340年ほど前に観測された超新星の残骸で、知られている中では最も若い超新星残骸です。カシオペヤ座の方向、約1万1000光年の距離にあります。超新星爆発にはいくつかタイプがありますが、カシオペヤ座Aは大質量星が最期に爆発を起こしたものです。

画像の詳細はこちら→ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた超新星残骸「カシオペヤ座A」

WR 124

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team

ウォルフ・ライエ星「WR 124」をとらえた画像。いて座の方向、1万5000光年の距離にある大質量星WR 124の周辺の星雲が映っています。ウォルフ・ライエ星では外層のガスが放出されて多くが失われており、放出されたガスが周囲に広がっています。太陽の30倍の質量をもつWR 124では、これまで太陽10個分の質量の物質が放出されました。ガスが星から遠ざかって冷えると塵が形成されます。ウェッブ望遠鏡は塵が放出する赤外線をとらえています。

画像の詳細はこちら→超新星爆発間近!? 大質量星が放出したガスと塵の雲をウェッブ望遠鏡が撮影

大マゼラン銀河のタランチュラ星雲

Image Credit: NASA, ESA, CSA, and STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, and STScI

大マゼラン銀河にあるタランチュラ星雲をとらえた画像。タランチュラ星雲は地球から16万1000光年の距離にあり、局所銀河群の中で最大かつ最も明るい星形成領域です。そこには最も高温で大質量の星も存在しています。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた大マゼラン銀河のタランチュラ星雲

小マゼラン銀河の星団NGC 346

Main Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, A. Pagan (STScI)

小マゼラン銀河にある星団NGC 346とその周囲の星雲。小マゼラン銀河は20万光年の距離にある矮小銀河です。NGC 346をとらえたこの画像には2種類の水素が映し出されています。ピンク色は励起した水素を表しており、一般的に約1万℃以上の高温になっています。一方オレンジ色の部分は、マイナス約200℃以下の高密度の分子水素と塵を表しています。低温のガスは星の形成に適した環境を提供します。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた小マゼラン銀河の星団NGC 346

(参考記事)多波長でみた小マゼラン銀河の星団「NGC 346」

棒渦巻銀河NGC 1433

Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Janice Lee (NOIRLab); IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Janice Lee (NOIRLab); IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)

棒渦巻銀河NGC 1433のガスや塵が映し出されています。NGC 1433は、とけい座の方向、4600万光年以上の距離にあります。銀河の中央には、二重リング構造をした明るい中心部が映っています。渦状腕では、形成中の星からの光を吸収したガスや塵が赤外線を放出して明るく見えています。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡が中間赤外線で撮った棒渦巻銀河NGC 1433

パンドラ銀河団

Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Ivo Labbe (Swinburne), Rachel Bezanson (University of Pittsburgh); IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)
Credits: SCIENCE: NASA, ESA, CSA, Ivo Labbe (Swinburne), Rachel Bezanson (University of Pittsburgh); IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)

「パンドラ銀河団」とも呼ばれる銀河団Abell 2744。パンドラ銀河団は複数の銀河団が合体してできたと考えられている巨大な銀河団です。画像は4枚の画像をパノラマ合成したもので、約5万もの近赤外線光源が映っています。また、パンドラ銀河団の質量は強力な重力レンズ効果を生み出しており、初期宇宙にあるはるか遠方の宇宙まで映し出されています。

画像の詳細はこちら→ウェッブ望遠鏡がとらえた「パンドラ銀河団」最新ショット

ウェッブ望遠鏡は太陽系から宇宙初期まで、さまざまな分野で大きな科学的成果をもたらしています。今後も、素晴らしい科学的成果とともに、美しい画像を続々と届けてくれるはずです。アストロピクスでは今後も、それらの画像について紹介していきます。

※2023年7月12日、ウェッブ望遠鏡の科学観測1周年を記念した画像が公開されました。→地球から最も近い星形成領域「へびつかい座ロー」 ウェッブ望遠鏡1周年記念画像