ガイア衛星の最新データが明らかにした天の川銀河のさまざまな精密マップ

2022年6月13日、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の位置天文衛星ガイア(Gaia)の最新データDR3(Data Release 3)が公開されました。DR3では、銀河系にある約20億個の星の詳細が新たに追加あるいは改善されており、化学組成や星の温度、色、質量、年齢、視線速度(星が私たちに近づく/遠ざかる速度)などに関する新しい情報が含まれています。今回紹介するのは、DR3のデータをもとに作られた4種類の全天マップです。

ガイア衛星は、天の川銀河の精密な3次元マップを作ることが目的の衛星です。星の運動や明るさ、温度、組成などをマッピングします。2013年12月に打ち上げられ、これまで2016年9月にGaia DR1、2018年4月にGaia DR2、2020年12月にGaia-EDR3が公開されてきました。

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視線速度

この画像は、天の川銀河にある3000万個以上の星の視線速度を示しています。これにより、天の川銀河の円盤部分の星がどのように運動しているのかを確認できます。

明るい領域は私たちから遠ざかる方向に動いており、暗い領域は私たちに近づく方向に動いています。明暗が交互にあることは、円盤が回転していることを反映しています。視線速度が周囲とは異なる天体もいくつかあります。

中央右下側には、大小マゼラン銀河が明るく見えています。小マゼラン銀河の左には、球状星団きょしちょう座47が小さな暗い点として映っています。

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視線速度と固有運動

この全天マップは、天の川銀河にある約2600万個の星の速度分布を示したものです。色は星の視線速度を示しており、青は星の平均的な運動が私たちから遠ざかっている部分、赤は近づいている部分を示しています。線は星の固有運動をトレースしたものです。

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星間塵

ガイアが観測したのは恒星だけではありません。天の川銀河の星と星の間の空間には何もないわけではなく、塵やガスの雲で満たされています。星はそのようなガス雲から誕生します。ガイアは、星の位置や散乱光を精密に測定することで、星間物質による星の光の吸収をマッピングできます。

この全天マップは、天の川銀河の星間塵を示しています。銀河面中央のように黒い領域は塵が多い部分で、塵の量が少なくなるにしたがって黄色へと変化しています。銀河面の上下の青いところは塵が少ない領域です。

化学組成

ビッグバン直後の宇宙ではほぼ水素とヘリウムしかありませんでした。そのため第1世代の星(ファーストスター)は軽い元素だけでできており、炭素や酸素など重い元素は恒星の中心核で核融合によって作られ、超新星爆発などで宇宙へばら撒かれます。ばら撒かれた星の残骸は、次の世代の星の材料となります。

この全天マップは、恒星の金属量を示しています。赤いほど金属量の多い星です。なお天文学で「金属」というときは、リチウムより重い元素のことを指します。化学組成を示した全天マップを見ると、銀河中心や銀河平面に近い星は、遠くにある星よりも金属量が豊富なことがわかります。星の金属量を調べることで、星の進化や天の川銀河の歴史に迫ることができます。

Image Credit: ESA/Gaia/DPAC; CC BY-SA 3.0 IGO, CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA