天の川銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在しています。そのブラックホールの周辺には高速で運動する星々が密集しており、星どうしの衝突がしばしば発生しているとみられます。
太陽から最も近い恒星までは約4光年の距離があります。「天の川銀河の中心の超巨大ブラックホール付近では、それと同じ距離の中に100万個以上の星があります」とアメリカ、ノースウェスタン大学のSanaea C. Rose氏はいいます。「超巨大ブラックホールは非常に強い重力をもっており、ブラックホールを周回する恒星は秒速数千kmもの速度で運動することがあります」とRose氏。
密集した中を激しく動いているので、星どうしが衝突する可能性があります。そして、超巨大ブラックホールに近いほど、星どうしの衝突の可能性は高くなります。
衝突・合体により若返ったように見える星も
Rose氏らの研究チームは、銀河中心付近の恒星集団の運命をたどることを目的としてシミュレーションを開発。そのシミュレーションでは、星団の密度や星の質量、軌道速度、重力、超巨大ブラックホールからの距離などが考慮されました。
Rose氏によると、星の運命を決める可能性が最も高い要因は超巨大ブラックホールからの距離だといいます。
ブラックホールから0.01パーセク(1パーセクは3.26光年)以内の星は、秒速数千kmにおよぶ速度で運動して互いに衝突します。ただ正面衝突することはほとんどなく、衝撃は星を完全に破壊するほどではないとのこと。それでも星の外層のガスは剥ぎ取られてしまい、低質量星の集団が形成されるとしています。
ブラックホールからの距離が0.01パーセクをこえると、星はややゆっくり運動することになります(とはいえ秒速数百km)。速度が遅い分、衝突した際に星どうしが合体してより巨大になります。複数回合体することで太陽の10倍もの質量になる可能性もあるようです。
「衝突・合体により、それらの星々はより多くの水素を集めます。それらはより古い種族から形成されているけれども、元気を取り戻した若い星を装っています」とRose氏。しかし若々しい外見とは裏腹に、寿命は短くなります。質量が大きい星ほど燃料が速く尽きてしまうので寿命が短くなるのです。
Image Credit: ESO/L. Calçada/spaceengine.org
(参照)Northwestern Now