秒速8000km! 銀河系中心のブラックホールのまわりを最短で公転する恒星を発見

私たちの天の川銀河(銀河系)の中心には、太陽の400万倍の質量をもつ超巨大ブラックホール「いて座A(エースター)」が存在しています。これまで知られている中で、いて座Aのまわりを最も速く公転する星「S4716」が、ドイツ、ケルン大学とチェコ、マサリク大学の研究者によって発見されました。

ケック望遠鏡の分光撮像器OSIRISで2020年に行われたS4716の観測。黒の×が、いて座A∗の位置で、明るい緑の円がS4716。Credit: Florian Peißker et al 2022 ApJ 933 49、doi: 10.3847/1538-4357/ac752f
ケック望遠鏡の分光撮像器OSIRISで2020年に行われたS4716の観測。黒の×が、いて座Aの位置で、明るい緑の円がS4716。Credit: Florian Peißker et al 2022 ApJ 933 49、doi: 10.3847/1538-4357/ac752f

S4716は、いて座Aを約4年間で周回し、その速度は秒速約8000kmに達します。またS4716がブラックホールに最接近するときは約100au(天文単位)まで接近します。これは天文学的には非常に近い距離です。なお天文単位とは太陽〜地球の平均距離をもとに決められた距離の単位で1天文単位は約1億5000万kmです。

いて座Aの近くには、明るさと質量が異なる100を超える数の星が存在しています。S4716は、それらの星々のなかでも特に高速で運動しています。超巨大ブラックホールにここまで接近して高速で、かつ安定した軌道の星は予想外だったと、論文の主著者であるFlorian Peissker氏は述べています。

今回の発見は、天の川銀河の中心で高速移動する星の軌道の起源と進化にも新たな光を当てるものです。「S4716の短周期でコンパクトな軌道は非常に不可解です」と共同研究者のMichael Zajaček氏は言います。「ブラックホールの近くではそう簡単に星は形成されません。S4716は、たとえば他の天体に接近するなどして内側に移動して軌道が大幅に縮小する必要があります」

(参照)University of Cologne論文