天の川銀河など渦巻銀河の中央部には「バルジ」と呼ばれる球状の膨らみがあります。バルジがどのように形成されたかは、長年の謎になっています。
バルジには100億歳の星の集団と、30億歳の若い星の集団があり、過去に少なくとも2回の爆発的な星形成があったとする研究もあります。ただ今回、天の川銀河の中心付近にある星の組成が非常によく似ており、バルジの星の大部分が100億年以上前に起きた爆発的な星形成で形成されたとする研究が発表されました。
天文学では水素やヘリウムより重い元素を「金属」と呼びます。金属は初期の世代の星で作られて恒星風や超新星爆発によって放出され、後の世代の星に取り込まれます。
約45億歳の太陽は約138億年の宇宙の歴史の中では比較的新しい星で、金属が豊富なことは理に適っています。対照的に天の川銀河にあるほとんどの古い星には金属が欠けています。しかしバルジにある星の組成を調べたところ、古いにもかかわらす金属が豊富に含まれていることが分かりました。
異なる時期に形成された星は、平均的に金属量が異なると予想されます。しかし銀河中心の1000光年以内の星の多くが似たような金属量でした。このことはそれらの星が、短期間の爆発的な星形成で形成されたことを示唆しています。
研究チームは満月1000個分に相当する200平方度以上の範囲を観測しました。観測には南米チリ北部にあるセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)にあるビクター・M・ブランコ4m望遠鏡に搭載されたダークエネルギー・カメラ(DECam)が使用されました。DECamは1回の露光で3平方度の範囲を撮影できる広視野カメラです。
45万枚以上の画像が撮影され、数百万の星々の化学組成を正確に決定しました。今回の研究では7万の星が分析されました。冒頭の画像は、天の川銀河の中心付近をとらえたもので、満月の2倍の広さ(0.5度×0.25度)に18万個以上の星が含まれています。これらの星を異なる波長の光で観測することで、星に含まれる金属の量が調べられました。
Image Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/STScI, W. Clarkson (UM-Dearborn), C. Johnson (STScI), and M. Rich (UCLA)
(参照)Hubblesite、NOIRLab