今から50年前の1971年11月14日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機マリナー9号が火星の周回軌道に入りました。地球以外の惑星の周回軌道に入ったのは、マリナー9号が史上初めてのことでした。マリナー9号の打ち上げは1971年5月30日。それから4か月半後に火星の人工衛星となることに成功したのです。
マリナー9号が火星に到着した当時、火星では9月下旬に始まった砂嵐が火星全体に広がっており、オリンポス山やタルシス三山といった巨大火山の頂上以外は表面を詳細に観測することはできませんでした。この画像は火星周回軌道に投入される直前の9月11日にマリナー9号が撮影した火星です。表面はほとんど見えていません。画像上の方に暗い斑点のようになっている部分がオリンポス山の頂上付近です。【参考記事】火星の超巨大火山 オリンポス山
1971年11月から12月にかけて砂嵐が収まり、表面の観測がスタートしました。この画像は、砂嵐から姿を現した火星の大峡谷「マリネリス峡谷」です。ただ峡谷内部の詳細は、この画像では見えていません。なおこの峡谷の名前はマリナー9号にちなんでつけられたものです。【参考記事】火星の大峡谷 マリネリス峡谷
この画像は、火星にある巨大火山の一つ、アスクレウス山の頂上にあるカルデラをマリナー9号がとらえたものです。1971年12月17日に撮影されました。なおマリナー9号の到着当時、全球的に砂嵐に覆われる中、表面に見えた4つのスポットのうち最北端にあったことから「ノーススポット」と呼ばれていました。アスクレウス山と命名されたのは1973年になってからです。【参考記事】バイキング1号がとらえた火星の三つの巨大火山
この画像は「ノクティス・ラビリントス」と呼ばれる地域をマリナー9号がとらえたものです。ノクティス・ラビリントスは、マリネリス峡谷の西にあります。
こちらはマリナー9号がとらえた火星の衛星フォボスの画像です。火星にはフォボスとダイモスという2つの小さな衛星があります。フォボスはそのうち火星に近い内側の軌道を公転している衛星です。【参考記事】火星の衛星フォボスの詳細画像
1972年2月11日、マリナー9号は当初の目標をすべて達成したとNASAが発表しました。ただその後も姿勢制御用のガスを使い果たした10月27日まで観測は続けられ、1〜2kmの解像度で火星表面の85%をマッピングし、衛星フォボスやダイモスをとらえた80枚の画像を含めて合計7329枚の画像を地球に届けました。また火星大気の組成や密度、圧力、温度などのデータ、そして表面の組成や温度、重力や地形などのデータを収集しました。
マリナー9号は1972年10月27日に電源が切られましたが、探査機自体はまだ火星の周回軌道を回っています。少なくとも2022年までは軌道にとどまり、その後、軌道を外れて火星の大気に突入すると予測されています。
Image Credit: NASA/JPL