天王星と海王星の色はなぜ違う? | アストロピクス

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天王星と海王星の色はなぜ違う?

NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査機ボイジャー2号がとらえた天王星(左)と海王星。海王星の中央に巨大な暗斑が見えています。Credit: NASA/JPL-Caltech/B. Jónsson
NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査機ボイジャー2号がとらえた天王星(左)と海王星。海王星の中央に巨大な暗斑が見えています。Credit: NASA/JPL-Caltech/B. Jónsson

太陽系第7惑星の天王星と、第8惑星の海王星。どちらも大きな氷の核をもつ「巨大氷惑星」とよばれます。天王星は半径2万5362km、海王星は半径2万4622kmとサイズはほぼ同じで、質量も天王星が地球の14.5倍、海王星が地球の17.2倍とよく似ています。また大気の組成も似ています。

どちらの惑星も、大気中に含まれているメタン分子が、太陽光の中の赤い光を吸収し青い光を散乱するために青く見えます。ただ海王星が濃い青色なのに対し、天王星はより薄い青色をしているという違いがあります。2つの惑星の色がなぜ違うのか。その理由を、ジェミニ北望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡、NASA赤外線望遠鏡施設などの観測結果と一致する大気モデルにより解明したとする研究が、オックスフォード大学のPatrick Irwin氏らの研究チームによって発表されました。

研究チームは、それらの望遠鏡で得られた紫外線、可視光、近赤外線(0.3〜2.5μm)のデータを分析しました。複数の大気層からなるとする研究チームによる新しい大気モデルは、幅広い波長域での観測結果とも一致しました。またこれまでメタンや硫化水素の氷の雲だけを含むと思われていた深層部に、もやの粒子が含まれることもわかりました。

今回の新たなモデルは、異なる高さにある3つのエアロゾルの層からなるものです。色に影響するのはそのうちの中間の層で、そこでは天王星の方が海王星より、もやが厚くなっています。天王星でも海王星でも、メタンの氷が中間の層の粒子に凝結し、メタンの雪となって大量の粒子が大気の深部へと引き込まれていると研究チームではみています。

天王星と比べ海王星の大気の方が活発で荒れているため、海王星大気ではメタン粒子がかき回されてもやの層に届きこの雪を生み出す効率が高いと研究チームは考えています。そのため海王星のもやの層は天王星よりも薄くなり、海王星のほうが濃い青色に見えるというのです。

また、海王星には「暗斑」と呼ばれる暗い嵐が出現することがあります。ただ天王星にはそのような暗い嵐は見られません。研究チームは、最深部の層のエアロゾルが暗くなることで暗斑が生じると考え、ハッブル宇宙望遠鏡の詳細画像でその仮説をチェックして確認しました。実際、モデルに基づいたシミュレーション画像が、ハッブル宇宙望遠鏡の画像とよく一致し同じ波長で見える暗斑を生み出していることがわかりました。天王星では中間のもやの層が海王星より厚いために、下層にある暗斑を覆い隠すと考えられています。

(参照)NOIRLabESA/Hubble