NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査機。ボイジャー1号は木星と土星の探査を行いましたが、ボイジャー2号はそれらの惑星に加え天王星と海王星も訪れました。
ボイジャー2号は1977年8月20日に打ち上げられました。打ち上げは2号の方が早かったのですが、木星や土星には1号の方が早く到達しました。
1979年7月9日、木星に最接近。最接近時の距離は木星から64万5000kmでした。木星の大赤斑や雲のようす、4つのガリレオ衛星、リングなどの観測を行いました。ボイジャー1号の最接近時に比べて、木星の雲が変化しているようすをとらえました。イオの観測からは、ボイジャー1号の観測時から表面が変化していること、また火山の噴火が継続していることが明らかになりました。
1981年8月26日、土星に最接近。最接近時の距離は土星から10万1000kmでした。土星本体やリングついて詳細な観測を行いました。Aリングの厚さが300mほどしかないことも示唆されました。ボイジャー2号はまた、ヒペリオンやエンケラドス、テティスなど多くの衛星の観測も行いました。
1986年1月24日、天王星に最接近。最接近時の距離は天王星から8万1500kmでした。ボイジャー2号は、天王星の大気の風速が時速724kmであることを発見しました。また最大の衛星チタニアなど天王星の5大衛星を観測したほか、新たに衛星を10個、リングを2本発見するなどの成果を上げました。
最果ての惑星である海王星に到達したのは1989年8月25日のことでした。最接近時、ボイジャー2号は海王星の雲頂から4800kmのところを通過しました。海王星の大気に時速2000kmの風が吹いていることを観測し、新たに6個の衛星と4本のリングを発見するなどの成果をあげました。ボイジャー2号の訪問時には、海王星の表面に「大暗斑」と呼ばれる暗い渦模様が存在していました。衛星トリトンの観測では、窒素の氷を噴き出す“火山”や、メロンの皮のような地形などを発見しました。
天王星と海王星を間近から観測したのは、今のところボイジャー2号だけです。
2018年12月10日に恒星間空間へ
太陽からは荷電粒子の流れである「太陽風」が絶え間なく吹き出しています。その太陽風が届く範囲を「ヘリオスフィア(太陽圏)」と言います。
太陽風は非常に遠方まで届きますが、やがて星間物質や星間磁場と衝突することで「ターミネーションショック(末端衝撃波面、終端衝撃波面)」が形成されます。その外側には「ヘリオシース」と呼ばれる太陽風が減速する領域があり、ヘリオシースの端、つまり太陽風の速度が0になるところは「ヘリオポーズ(太陽圏界面)」と呼ばれています。
ボイジャー2号は2006年5月ごろにターミネーションショックを通過したとみられています。そして2018年12月10日、ボイジャー2号はヘリオポーズをこえて恒星間空間へと入りました。2012年8月1日に恒星間空間に入ったボイジャー1号に続き、ヘリオスフィアを抜けた2機目の探査機となりました。ボイジャー2号は現在、秒速約15.4kmの速度で恒星間空間を移動しています。
こちらの映像は、1977年の打ち上げから2017年12月までのボイジャー2号の軌道を示したものです(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)。木星の手前付近まではボイジャー1号と並走するように航行していました。木星や土星でのフライバイによって軌道の向きを大きく変化させていることがわかります。映像中に現れるグリッドは、ターミネーションショックとヘリオポーズを示しています。
2機のボイジャーには、遠い将来、ボイジャーを発見するかもしれない地球外知的生命へ向けたレコードが搭載されています。レコードには55の言語による挨拶、さまざまな生物の声や音楽のほか、地球の生物の画像115枚も収録されています。(参考記事)ボイジャー探査機の「ゴールデンレコード」
これまでアストロピクスに掲載したボイジャー2号関連の記事については、こちらをご覧ください。