NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星ヘリコプター「インジェニュイティ」は2023年7月22日、53回目の飛行を行いました。その際にトラブルが発生、緊急時に対応するプログラムが作動して予定より早く着陸しました。
53回目の飛行は、探査車パーサヴィアランスの科学チームのために、火星表面の画像を撮影することを目的としたものでした。5mの高度を秒速2.5mで203m北へ飛行し、その場所で2.5mの高度まで垂直に降下、そこでホバリングしながら岩の露頭を撮影するよう計画されていました。その後、高度10mまで上昇し、危険回避システムを作動させてから垂直に降下して着陸する予定でした。合計136秒間の飛行が予定されていました。
しかし実際には、インジェニュイティは高度5mで142m飛行したのち、緊急時に対応するプログラムが作動して着陸しました。総飛行時間は予定の半分ほどの74秒でした。
6回目の飛行時のトラブルと似た現象が発生か
インジェニュイティのチームは、火星ヘリのナビゲーションカメラからの画像フレームが、IMU(慣性計測装置)からのデータと期待通りに同期しなかったことが予定外の着陸の原因と見ています。IMUは、加速度や回転速度を測定して機体の動きや向いている方向などを把握する装置で、ナビゲーションカメラの情報を使って精度を維持します。
2021年5月22日に実施された6回目のフライト時にも、ナビゲーションカメラの画像フレームが失われたことで機体が大きく振動したことがありました。その後ソフトウェアを更新したことで、問題なく飛行が行われてきていました。ただ53回目の飛行では、失われた画像の数が許容量を超えてしまったため、緊急対応のプログラムが作動したのではないかと見られています。(参考記事)火星ヘリコプター、6回目の飛行で異常発生も無事着陸
8月3日に実施された54回目は無事完了しました。この54回目の飛行により、53回目の飛行時の予定外の着陸の原因を特定するのに役立つデータが得られたとのことです。