宇宙では銀河どうしが衝突・合体する現象がしばしばみられます。銀河中心には超巨大ブラックホールがあり、その質量は太陽の数百万〜数十億倍にもなります。超巨大ブラックホールにガスが流れ込む際に非常に明るく輝き、銀河全体より明るくなります。そのような現象をクエーサーと呼びます。
銀河どうしが衝突・合体する際には、ブラックホールへのガスの流入が特に多くなり、2つのブラックホールが二重クエーサーとなって輝くとみられています。ただそのようなクエーサーのペアは、これまであまり見つかっていませんでした。2つのクエーサーが同時に輝く期間は短く、また近接した2つのクエーサーを見分ける能力も必要です。観測には広い視野と高分解能の両方が必要で、多くの二重クエーサーを見つけて研究を進めることは困難でした。
今回、東京大学や国立天文台などの研究チームはまず、広い範囲を高解像度で一度に観測できる、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(Hyper Suprime-Cam、HSC)がとらえた3万4476個の既知のクエーサーの中から、2つ以上の光点を持つ421個の天体を選び出しました。それらの天体をケックI望遠鏡とジェミニ北望遠鏡で分光観測を行った結果、3つの二重クエーサーを特定しました。そのうちの2つは、これまで知られていなかった二重クェーサーでした。
冒頭の画像は、今回発見された二重クエーサー「SDSS J141637.44+003352.2」です。47億光年の距離にあります。2つのクエーサーは1万3000光年離れており、巨大銀河の中心に位置しています。2つのブラックホールの質量は、太陽の2億倍と8000万倍です。
今回の観測結果から、全てのクエーサーの0.3%は、銀河の合体の過程で超大質量ブラックホールが2つ存在していると推定されました。研究チームではさらに多くの二重クエーサー候補のスペクトルを得ています。今後も研究を進め、銀河や超大質量ブラックホールの合体や進化について理解を深めることを目指しているとのことです。
Image Credit: Silverman et al.