恒星間天体ボリソフ彗星の故郷は赤色矮星か? | アストロピクス

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恒星間天体ボリソフ彗星の故郷は赤色矮星か?

2019年8月末に発見された恒星間天体ボリソフ彗星(2I/Borisov)は、12月に太陽や地球に最接近しました。そのころにハッブル宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡によって行われたボリソフ彗星観測の成果が発表されました。

ハッブル宇宙望遠鏡では、COS(宇宙起源分光器)を使った観測が2019年12月11日から2020年1月13日にかけて4回行われました。一方、アルマ望遠鏡の観測は2019年12月15日と16日に行われました。

それらの観測の結果、ボリソフ彗星が、太陽系の彗星と比べて特異な組成をしていることが分かりました。太陽から2天文単位(約3億km)以内にある太陽系内の彗星と比べ、一酸化炭素の含有量が非常に多いことが分かったのです(参照:「恒星間天体ボリソフ彗星の組成は太陽系の彗星と違っていた」)。

水分子に対する一酸化炭素分子の比率が高いことからボリソフ彗星は、太陽系でいえば海王星以遠の「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる場所と同じくらい低温の領域からやってきたことが示唆されています。

ハッブルで彗星を観測した研究チームではさらに、一酸化炭素が多いことはボリソフ彗星が赤色矮星のまわりで形成されたのではないかと考えています。赤色矮星は太陽より小さくて暗いので、赤色矮星のまわりで惑星の元になる物質は太陽系に比べて低温になります。

ハッブルのチームではまた、赤色矮星のまわりにある木星サイズの巨大惑星の軌道が内側に移動した影響で、ボリソフ彗星が赤色矮星系の外に追いやられて太陽系までやってきた可能性もあると見ています。

冒頭の映像は、ハッブル宇宙望遠鏡が観測したボリソフ彗星のタイムラスプ映像です。2019年12月9日から2020年2月24日の間に、WFC3(広視野カメラ3)で撮影された37枚の画像から作られました。

Image Credit: NASA, ESA and J. DePasquale (STScI)

https://hubblesite.org/contents/news-releases/2020/news-2020-26

https://www.nasa.gov/feature/interstellar-comet-borisov-reveals-its-chemistry-and-possible-origins