2022年9月26日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験機)が小惑星ディディモスのまわりを回るディモルフォスに衝突し、小惑星の軌道を変える技術の実証実験を行うことになっています。
探査機DARTについてはアストロピクスでも紹介したことがあります(参考記事:探査機を衝突させて小惑星の軌道を変える世界初のミッション「DART」)。今回の記事では、目的地である二重小惑星ディディモスとディモルフォス大きさや軌道などについて紹介します。
大きい方のディディモスは直径約780m、小さい方のディモルフォスは直径約160mあります。ディディモスは約2.26時間で自転しています。ディモルフォスはディディモスから約1kmはなれたところを約11.9時間で1周します。
ディディモスの形は、はやぶさ2が探査した小惑星リュウグウや、オシリス・レックスが探査した小惑星ベンヌのように、赤道に沿って隆起した尾根が走る「コマ形」をしています。ディモルフォスの形についてはやや細長いように見えること以外はあまりよくわかっていません。
ディディモスの公転軌道は?
こちらはディディモスの軌道図(白)です。色付きの軌道は内側から水星、金星、地球(水色)、火星の軌道です。各天体は2022年9月26日の位置がプロットされています。
ディディモスの太陽からの平均距離は約1.64天文単位(1天文単位は太陽〜地球間に相当する距離で約1億5000万km)で、約2.11年(約770日)で太陽を1周しています。
ただディディモスが太陽から最も遠ざかる地点(遠日点)は火星の公転軌道より遠く、一方で太陽に最も近づく地点(近日点)は地球の公転軌道付近になります。遠日点の太陽からの距離は約2.28天文単位、近日点の太陽からの距離は約1.01天文単位です。軌道は黄道面に対して約3.4度傾いています。
軌道図を見ると、2022年9月26日には地球とディディモスの位置がかなり近いことがわかります。DARTの衝突時期が2022年秋になったのはまさにそれが理由です。DARTの衝突後には、地上の望遠鏡を使ってディモルフォスの軌道の変化を調べることになっています。この時期、地球とディディモスの距離がほぼ最小の約1100万kmになり地球上から観測しやすいのです。
DARTはディモルフォスに対して“正面衝突”します。それによりディモルフォスの公転周期が短くなり、ディディモスに近づくと予想されています。カメラを備えた「LICIACube」という小型衛星(キューブサット)が9月11日にDARTから放出されており、衝突の瞬間や衝突後のディモルフォスの表面などを撮影する予定です。また2026年にはESA(ヨーロッパ宇宙機関)の探査機ヘラ(HERA)が到着し、ディモルフォスを調べることになっています。
(参考記事)探査機を衝突させて小惑星の軌道を変える世界初のミッション「DART」、地球防衛ミッションのターゲット 小惑星ディディモスの“月”の名が「ディモルフォス」に