2021年11月24日(日本時間)、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機DART(Double Asteroid Redirection Test)が打ち上げられる予定になっています。DARTは、小惑星に衝突して軌道を変化させる技術を実証するための世界初の探査機です。
DARTのターゲットは、地球近傍小惑星ディディモスと、その周りを回るディモルフォスからなる二重小惑星です。ディディモスは直径780mほど、ディモルフォスは直径160mほどの大きさがあります。太陽の周りを2.11年(770日)かけて公転しています。
DARTは、2022年秋(9月26日〜10月1日の予定)に小さい方のディモルフォスへ衝突することになっています。DARTは、ディモルフォスに対してほぼ正面から、秒速6km強の速度で衝突します。それによりディモルフォスの公転周期は短くなる(ディディモスに近づく)ことになります。なお現在ディモルフォスは、ディディモスから約1.2km離れたところを11時間55分かけて1周しています。DARTの衝突によって、1周する周期が数分間短くなると見積もられています。
衝突後には、地上の望遠鏡を使って小惑星の動きがどの程度変化したかを測定します。ディディモスとディモルフォスは地球から見て食連星になっており、ディモルフォスはディディモスの周りを公転する際、ディディモスの手前側を通過したりディディモスの向こう側に隠れたりします。望遠鏡を使って二重小惑星の明るさの規則的な変化を測定することで、ディモルフォスの軌道がわかります。衝突前後の測定値を比べることで、ディモルフォスの軌道の変化を明らかにできるのです。
なおDARTの衝突が2022年秋に予定されているのには理由があります。その時期、地球とディディモス系の距離がほぼ最小(約1100万km)になるため、地上から観測しやすいのです。
DARTは「DRACO」と呼ばれる高解像度カメラで2つの小惑星の観測を行います。また光学カメラを2台備えた「LICIACube」という小型衛星(キューブサット)を搭載しています。LICIACubeは衝突10日前にDARTから放出され、衝突の瞬間や発生する噴出物、衝突後にできるクレーターなどを撮影することになっています。
なお2024年にはESA(ヨーロッパ宇宙機関)の探査機ヘラが打ち上げられ、DARTの衝突から4年後の2026年にディディモス系に接近することになっています。ヘラは2機のキューブサットとともに、衝突後にできたクレーターをはじめ2つの小惑星を詳細に観測する予定です。
(参照)DART