地球から最も近いブラックホールが発見された!

※この記事で紹介している研究については2022年に、HR 6819星系はブラックホールを含む3重星ではなく、2つの星からなる近接連星であることが明らかになりました。→「地球に最も近いブラックホール」は存在しなかった!

地球から1000年光年の距離にある、これまで発見された中で最も地球に近いブラックホールが発見されました。そのブラックホールは、夜空が暗く条件が良ければ双眼鏡などを使わなくても肉眼で見ることができる「HR 6819」という星系に存在しています(南天のぼうえんきょう座にある星なので、日本からはほとんど見えません)。

研究チームは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のMPG/ESO 2.2m望遠鏡を使ってHR 6819を観測しました。研究チームではもともと、HR 6819は2つの星からなる連星系だと考えていました。しかし観測結果を分析する中で、第3の天体であるブラックホールの存在が明らかになったのです。

冒頭の想像図は、HR 6819での天体の軌道を描いたものです。目に見える2つの星のうちの1つの星(青い軌道)と見えないブラックホール(赤い軌道)は質量がほぼ同じで円軌道を描いています。目に見える星はブラックホールのまわりを40日でまわっており、もう1つの星(青い軌道)はこれらの天体のペアから離れたところに存在していることが分かりました。

ブラックホールからは光(電磁波)は出てこないので、望遠鏡などで直接ブラックホールを見ることはできません。これまで発見されたほぼ全ての恒星質量ブラックホールは、ブラックホールに引き寄せられた物質がこすれ合って超高温になるなど、周囲の環境と強力に相互作用してX線を放射することで発見されています。

今回発見されたブラックホールには、そのような相互作用はありません。HR 6819の見えない天体のように、周囲との相互作用がなく発見されていないブラックホールは数多く存在するとみられます。今回の発見は、未発見のブラックホールの隠れ家に関する手がかりを与えるものです。研究チームではすでに、「LB-1」という別の星系にもブラックホールが隠されている可能性があると考えています。

Image Credit: ESO/L. Calçada

https://www.eso.org/public/news/eso2007/