火星の南極域のクレーター周辺をマーズ・エクスプレスがとらえた

この画像は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスがとらえたもので、奥にあるクレーターと、そこにつながる尾根が映っています。2022年5月19日に、マーズ・エクスプレスの高解像度ステレオカメラ(HRSC)で撮影されました。クレーターの縁に沿うように、水の氷と細粒の堆積物とが交互に層をなした縞模様が見られます。その縞模様は、手前の尾根でも露出しています。

こちらは同じクレーターを別の角度から見たものです。

こちらは冒頭の画像に映る場所も含めて、より広範囲を真上から見た画像です。マーズ・エクスプレスがとらえた、火星の南極付近のUltimi Scopuli地域が映っています。画像に映る広い範囲が白いため冬に撮影されたと思うかもしれませんが、実際には南半球が春になり氷が後退し始めている時期に撮影されたもので、暗い砂丘が霜の間から顔をのぞかせています。

画像では、2つの大きなクレーターが目をひきます。冒頭の画像に映る左側のクレーターだけでなく、右側のクレーターにも層構造が見られます。画像全体に暗い砂丘がみられ、一部の領域は薄い霜の層で覆われています。「ヤルダン」と呼ばれる侵食地形のような地形も見られます。また画像中央付近には薄い雲がかかっており、地表面をうっすらと隠しています。

火星の極域では、二酸化炭素の氷(ドライアイス)が冬に堆積し、春になると昇華します。解像度を落としたこの画像では見えにくいですが、暗い塵が積もった斑点状の領域が画像全体に見られます。これは、春になり氷の下でドライアイスが昇華することで生じた二酸化炭素が氷の層を突き破って地表に噴出し、そのときにいっしょに放出された暗い塵が積もったものです。

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2022年12月26日から火星の「新年」がスタート

火星が春分点に位置していた1955年4月11日を基準に火星の紀元をスタートして年(MY、Mars Year)を数える方法が、主に専門家の間で使われています。火星は太陽のまわりを687日で公転しています。つまり火星の1年(1火星年)は687日です。1955年4月11日から数えると、2022年12月26日から火星の紀元37年がスタートしました(2024年11月11日まで)。参考記事:「火星の1年」は地球とどう違う?

Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin, CC BY-SA 3.0 IGO

(参照)ESA