「火星の1年」は地球とどう違う? | アストロピクス

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「火星の1年」は地球とどう違う?

ESAの火星探査機マーズ・エクスプレスが2019年6月にとらえた火星のようす。Credit: ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum), CC BY-SA 3.0 IGO

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のウェブページで、火星の「新年」にあわせて火星の1年が地球とどのように違うのかについて紹介されています。ここではESAのページの内容に沿って、補足説明を加えながら紹介します。

火星は地球の一つ外側を公転しています。公転周期は地球より長く、火星の1年は地球の687日に相当します。地球に比べると2倍近く(正確には1.88倍)の時間をかけて、太陽のまわりを1周しています。自分の年齢を1.88で割れば火星での年齢になりますので、自己紹介時に火星での年齢を使ってみてはいかがでしょうか。

火星が1回の時点にかかる時間、つまり火星の1日は地球よりわずかに長く、24時間39分です。この火星の1日のことは「sol」と呼ばれます。日本語では「火星日」といわれます。

火星は自転軸が25.2度傾いているため地球(自転軸の傾きは23.4度)と同じように四季があり、北半球の夏には北半球が、北半球の冬には南半球がより太陽光を多く受けることになります。ただ地球と比べて火星では各季節の長さに違いがあります。これは火星の公転軌道が地球よりもゆがんだ(つぶれた)楕円であるためです。たとえば北半球の春(南半球の秋)は最も長い季節で194火星日あるのに対して、北半球の秋(南半球の春)は最も短く142火星日しかありません。

ちなみに公転軌道がどれくらい円に近いか(遠いか)を示す数値に「軌道離心率」があります。これは数値が0に近いほど円に近く、1に近いほどゆがんだ楕円になります。地球の軌道離心率が0.01671123なのに対して、火星の軌道離心率は0.0933941です。

ゆがんだ楕円の公転軌道のため、火星は南半球の春から夏にかけて太陽に近くなります。大気が暖まって上昇気流が生じ、火星表面から細かい砂が舞い上がります。そのためその時期には激しい砂嵐が発生することが多く、惑星全体をおおうような砂嵐になることもあります。

火星では季節に特有の気象現象も見られます。南半球の春や夏の時期、長さ1800kmにも及ぶ氷の結晶の雲が毎年現れます。「Arsia Mons Elongated Cloud」と呼ばれるその雲は、アルシア山付近に少なくとも80火星日ほど毎日現れます。アストロピクスではその雲の画像を紹介したことがありますので、興味のある方はこちらをご覧ください。

火星が春分点に位置していた1955年4月11日を基準に、火星の紀元をスタートして年(MY、Mars Year)を数える方法が、主に専門家の間で使われています。上述したように火星の1年は687日で、2021年2月7日から火星の紀元36年が始まります。紀元37年は2022年12月26日から、38年は2024年11月12日、39年は2026年9月30日、40年は2028年8月17日から始まります。火星の紀元についてはアメリカ惑星協会のページでくわしく紹介されています。

なお冒頭の画像についてはアストロピクスの過去記事で紹介しています。

(参照)ESA