火星の「グリニッジ天文台」 | アストロピクス

【Googleニュースでアストロピクスをフォローして新着記事をチェック!】

火星の「グリニッジ天文台」

これはNASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した画像で、「エアリー0(ゼロ)」と名付けられた直径0.79kmほどの小さなクレーターが映っています。以前もアストロピクスで紹介したように、このクレーターは火星の経度0(ゼロ)の位置の基準となっています。

火星の経度0の位置は、もともと直径約43kmのエアリー・クレーターが基準となっていました。しかしより高解像度の画像が得られるようになり、より小さな地形が基準として必要になりました。エアリー0・クレーターは、エアリー・クレーターの中にあります。既存の火星地図を調整する必要がないことから、このクレーターが基準として選ばれました。

なお現在は厳密には、バイキング1号の着陸機(ランダー)の東47.95137度に火星の経度0度が位置すると定義されています(つまりバイキング1号着陸機は西経47.95137度に位置しています)。その経度0の位置にエアリー0・クレーターはあります。

エアリーとは、イギリスのグリニッジ天文台に子午環という望遠鏡が設置された1850年当時の天文台長の名前です。地球上の経度0度の子午線(本初子午線)はもともと、その子午環の中心を通っていました(現在の世界標準となるIERS基準子午線はそこから100mほど東にあります)。

マーズ・リコネッサンス・オービターに搭載された高解像度カメラHiRISEのウェブページでは、HiRISEで撮影した画像を毎日1枚ずつ、HiPOD(HiRISE Picture of the Day、HiRISEの今日の1枚)として紹介しています。この画像は2021年10月27日に撮影されたもので、2022年1月20日のHiPODとして紹介された画像です。

Image Credit: NASA/JPL/UArizona

(参照)HiRISE