火星の経度0度(本初子午線)の基準となったクレーター | アストロピクス

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火星の経度0度(本初子午線)の基準となったクレーター

地球上で経度0度の子午線(本初子午線)はもともと、イギリスのグリニッジ天文台にある子午環という望遠鏡の中心を通っていました(現在の世界標準となるIERS基準子午線はそこから100mほど東にあります)。この子午環は、1850年に当時の天文台長だったエアリーによって設置されたものです。

では火星の本初子午線(経度0度)は、何が基準になっているかご存知でしょうか。この画像には、火星の経度0度の基準となったクレーターが映っています。このクレーターは、エアリーにちなんで名付けられた直径約43kmのエアリー・クレーターの中にある、「エアリー0(ゼロ)」と名付けられた直径0.79kmほどの小さなクレーターです。

1830年代に火星の自転周期を測定するために基準とした円形の模様が、1877年にイタリアの天文学者スキアパレリが作成した地図で経度0度の地点として使われました。その場所はその後「子午線湾(Sinus Meridiani)」と名付けられました。

NASA(アメリカ航空宇宙局)のマリナー9号が1970年代に行った観測ののち、火星の経度0度を指定するために使われたのが、冒頭の画像に映るエアリー0・クレーターです。ただ現在は厳密には、バイキング1号の着陸機(ランダー)の東47.95137度に経度0度が位置すると定義されています(つまりバイキング1号着陸機は西経47.95137度に位置しています)。

マーズ・リコネッサンス・オービターに搭載された高解像度カメラHiRISEのウェブページ(アリゾナ大学)では、HiRISEで撮影した画像を毎日1枚ずつ、HiPOD(HiRISE Picture of the Day、HiRISEの今日の1枚)として紹介しています。この画像は2021年9月8日に撮影されたもので、2021年11月29日のHiPODとして紹介されました。

Image Credit: NASA/JPL/UArizona

(参照)HiRISE