探査車キュリオシティの画像から作られた火星の幻想的な光景

やや幻想的にも見える不思議な色合いをしたこの火星画像は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車キュリオシティが撮影したものです。ただし色は自然のものではありません。

キュリオシティは2021年11月16日(火星表面での活動開始から3299火星日)、現地での午前8時30分と午後4時10分に、モノクロのナビゲーションカメラを使って同じ景色を撮影しました。

これらが午前(上)と午後(下)に撮影された画像です。午前と午後なので太陽光の当たり方が異なり、対照的な光の状態となりました。午前のシーンを青、午後のシーンをオレンジに色付けるなどして芸術的に作成されたのが冒頭の画像です(※記事末の註釈参照)。1日のうちの異なる時間帯に見た光の状態が1枚にまとめられているのです。

キュリオシティは2012年に火星のゲール・クレーターに着陸しました。2014年から、クレーター内にある高さ5kmのシャープ山を登っています。画像中央にはそのシャープ山の麓の方向が映っています。画像の右端には「ラファエル・ナバロ山」と名付けられた丘(近くからキュリオシティが撮影した画像はこちら)が見えており、その向こう側にはシャープ山の上部が映っています。写真の奥には、30〜40km離れたところにある高さ約2.3kmのクレーターの縁が見えています。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech

(参照)Mars Exploration Program

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画像の作成方法について

(※)以下、画像の作成方法について12月2日に追記しました。

画像を掲載しているNASA・JPLのウェブページでは「They combined the two scenes in an artistic re-creation that includes images from the morning scene in blue, the afternoon scene in orange, and a combination of both in green.」としか説明がありませんが、次のようにして画像を作成したと考えられます(以下の手順は一例です)。

  1. 午前の画像を青く色づけます。より具体的にはモノクロ画像の上に青色のレイヤーを乗算で重ねた上で画像を統合します。
  2. 午後の画像をオレンジに色付けます。より具体的には、午前の画像と同様に、モノクロ画像の上にオレンジ色のレイヤーを乗算で重ねた上で画像を統合します。
  3. 午前の画像の上に午後の画像をレイヤーとして重ねます。両方の風景がピタリと重なるように位置や角度を合わせ、上(午後)のレイヤーの不透明度を50%にしてから統合します。統合した画像の上に緑色のレイヤーを乗算で重ねた上で画像を統合します。
  4. 青、オレンジ、緑に色付けた画像をレイヤーで重ね、不透明度を調整しながら合成します。

このような画像を作成する際は通常、R(赤。今回はオレンジですが)、G(緑)、B(青)の3色分の画像を用意して合成することが多いのですが、2枚しかない場合、一方をR、もう一方をBに割り当て、それらを重ねてGの画像を作成することがあります。今回はそのような手法を用いたと考えられます。アストロピクスの過去記事「金星探査機『あかつき』の撮影データを利用して疑似カラー画像を作ってみよう!」で、似たような手法を紹介していますので、興味のある方はご覧ください。