ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 観測2年目のベストショット10選

2021年12月に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、2022年7月から科学観測をスタート。2024年7月には観測2周年を迎えました。

この記事では、ウェッブ望遠鏡の科学観測2年目に撮影された画像のなかから10点を選んでウェッブ望遠鏡の活躍を振り返ります。なお画像の選定は編集部の独断によります。

(参考)ウェッブ望遠鏡、初画像公開から1年間のベストショット10

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ハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」

Image Credit: NASA, ESA, CSA, J. DePasquale (STScI)
Image Credit: NASA, ESA, CSA, J. DePasquale (STScI)

ハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」をNIRCam(近赤外線カメラ)でとらえた画像。HH 46/47は、ほ座の方向、1470光年の距離にあります。

ハービッグ・ハロー天体は、生まれたばかりの若い星から噴き出した高速ジェットが、周囲にあるガスと塵の雲に衝突した際に光って見える星雲状の天体です。この画像では、ジェットが衝突して淡いオレンジ色に輝いて見えています。

(参照)激しくジェットを噴き出す若い星「HH 46/47」 ウェッブ望遠鏡が撮影

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環状星雲

Image Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, M. Barlow, N. Cox, R. Wesson
Image Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, M. Barlow, N. Cox, R. Wesson

NIRCam(近赤外線カメラ)で撮影した「環状星雲(M57、NGC 6720)」。環状星雲は、こと座の方向、地球から約2500光年の距離にある惑星状星雲です。

ウェッブ望遠鏡の観測により、この星雲の「環(リング)」が約2万にもおよぶ高密度な水素ガスの塊で構成されていることがわかりました。それぞれの塊は、地球とほぼ同じ質量があります。一方、環の内側には高温ガスが存在しています。

(参照)「環状星雲」の超高解像度画像 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影

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かに星雲

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Tea Temim (Princeton University)
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Tea Temim (Princeton University)

「かに星雲」と呼ばれる超新星残骸。おうし座の方向、6500光年離れたところにあります。かに星雲は、1054年に観測された超新星の残骸です。画像はウェッブ望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)で撮影されました。

画像には、オレンジ色に見えるガスのフィラメントが籠のような構造を作っているのが映っています。またウェッブの観測により中央付近の領域で、塵粒子からの放射(黄白色と緑色)が初めてはっきりと示されました。

(参照)超新星残骸「かに星雲」をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた

カシオペヤ座A

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, D. Milisavljevic (Purdue University), T. Temim (Princeton University), I. De Looze (University of Gent)
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, D. Milisavljevic (Purdue University), T. Temim (Princeton University), I. De Looze (University of Gent)

こちらは「カシオペヤ座A」と呼ばれる超新星残骸を撮影した画像。カシオペヤ座Aは、カシオペヤ座の方向、約1万1000光年の距離にあります。残骸全体は10光年ほどの大きさです。カシオペヤ座Aのもとになった超新星は、今から340年ほど前に観測されました。

カシオペヤ座AをMIRI(中間赤外線装置)で撮影した画像は、ウェッブ望遠鏡の1年目に公開されていましたが、こちらはNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影したものです。膨張する「殻」のような複雑な構造の詳細を明らかにしています。

(参照)ウェッブ望遠鏡が近赤外線でとらえた超新星残骸「カシオペヤ座A」

天王星

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

NIRCam(近赤外線カメラ)でとらえた天王星。淡いリング(環)がはっきりと映り、またいくつもの衛星も映っています。画像では、天王星に最も近い非常に淡いリングであるゼータリングも見えており、リングの外側には9個の衛星が青い点として見えています。

2023年初めに公開されたウェッブ望遠鏡の天王星画像は、赤外線の2波長でとらえた画像を合成したものでしたが、今回公開されたのは4波長でとらえた画像を合成したもので、より詳細が映し出されています。

(参照)天王星の詳細最新画像 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

19のフェイスオン銀河

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Janice Lee (STScI), Thomas Williams (Oxford), PHANGS Team
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Janice Lee (STScI), Thomas Williams (Oxford), PHANGS Team

ウェッブ望遠鏡がとらえた19の渦巻銀河。すべての銀河が、地球に対して銀河円盤を正面に向けた、いわゆる「フェイスオン銀河」です。画像はいずれも、NIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)で撮影したデータを組み合わせたもの。

NIRCamのデータは青で示されており、多くの星々がとらえられています。MIRIのデータはオレンジや赤色で示されており、主に塵が見えています。MIRIのデータにはそのほかにも、ガスと塵に包まれた形成中の星の在処も映っています。

(参照)ウェッブ望遠鏡がとらえた19の「フェイスオン」渦巻銀河コレクション

馬頭星雲の「たてがみ」

Image Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, K. Misselt (University of Arizona) and A. Abergel (IAS/University Paris-Saclay, CNRS)
Image Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, K. Misselt (University of Arizona) and A. Abergel (IAS/University Paris-Saclay, CNRS)

オリオン座にある馬頭星雲(バーナード33)のたてがみにあたる部分の超クローズアップ。NIRCam(近赤外線カメラ)で撮影された画像です。背景に多くの遠方銀河が散りばめられています。

(参照)ウェッブ望遠鏡がとらえた馬頭星雲の「たてがみ」の超クローズアップ

へび座星雲

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, K. Pontoppidan (NASA’s Jet Propulsion Laboratory), J. Green (Space Telescope Science Institute)
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, K. Pontoppidan (NASA’s Jet Propulsion Laboratory), J. Green (Space Telescope Science Institute)

「へび座星雲」をNIRCam (近赤外線カメラ)でとらえた画像。へび座星雲は、地球から約1300光年の距離にあります。星の光をガスや塵の雲が反射して輝いて見える反射星雲で、年齢は100万〜200万年ほどの非常に若い天体です。

(参照)星々の誕生の場で新たな発見 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた「へび座星雲」

宝石のリング

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Nierenberg
Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Nierenberg

この画像には、まるで宝石の指輪のような形状をしている天体が映っています。指輪の正体は、60億光年の彼方にあるクエーサーです。手前側にある銀河の重力レンズ効果によって、遠方にあるクエーサーの像が弧状に広がり、また複数に分かれて見えています。

(参照)ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた宝石のリング その正体は……

ペンギンと卵? 相互作用銀河Arp 142

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

こちらはアストロピクスでも先日紹介したばかりの画像です。ウェッブ望遠鏡の科学観測2周年を記念して公開されたもので、相互作用銀河「Arp 142」が映っています。NIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)の画像を合成したもの。卵を抱くペンギンのように見えるといわれることがある銀河のペアです。

Arp 142は、うみへび座の方向、3億2600万光年の距離にあります。ペンギンにあたる銀河NGC 2936は渦巻銀河が変形したもの、卵にあたる銀河NGC 2937は楕円銀河です。

(参照)ペンギンと卵のような相互作用銀河Arp 142 ウェッブ望遠鏡の科学観測2周年記念画像