ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やアルマ望遠鏡などを使った観測から、宇宙初期の銀河で、これまで知られていなかった複雑な内部構造が明らかになりました。
100時間以上の観測で「宇宙のブドウ」がみえてきた

観測されたのは誕生9億年後の宇宙に存在した銀河です。この銀河は強い重力レンズ効果を受けて明るく拡大されてみえる天体ですが、従来の観測ではなめらかな円盤状にみえており、細かい構造まではみえていませんでした。
トロント大学の藤本征史氏らの研究グループは、ウェッブ望遠鏡とアルマ望遠鏡を用いて100時間以上観測を行いました。重力レンズ効果によって拡大された効果もあり、約30光年まで分解する解像度で天体の像が得られました。その結果、銀河の内部に少なくとも15個以上のコンパクトな星団が集まっているようすが明らかになったのです。それはまるで、ブドウの房のようにもみえる構造でした。
宇宙の構造形成に関する理解に再考を迫るか

従来、宇宙初期の銀河の観測は、主に大きくて明るい銀河を対象に行われてきました。今回観測された銀河は、星形成活動や重さ、大きさ、化学組成など、さまざまな観点から見て宇宙初期で一般的な銀河とみられています。ほかの銀河でも、まだ観測できていないだけで、多くの星団を含む同じような構造がある可能性があります。
ブドウの房のような内部構造は、これまでの観測や数値シミュレーションではほとんど再現されていませんでした。回転銀河は比較的なめらかな構造をとると考えられており、初期の銀河での超新星爆発やブラックホールなどからのエネルギー放射が想定より弱く、宇宙の構造形成に関する理解に再考を迫ることになるかもしれないとのことです。
(参照)アルマ望遠鏡、東京大学宇宙線研究所