ペンギンと卵のような相互作用銀河Arp 142 ウェッブ望遠鏡の科学観測2周年記念画像

2024年7月12日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の科学観測開始から2周年を記念した画像が公開されました。この画像は、互いの重力で影響を与えあう相互作用銀河「Arp 142」を、ウェッブ望遠鏡がとらえたものです。NIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線装置)の画像を合成したもの。Arp 142は、卵を抱くペンギンのように見えるといわれることがある銀河のペアです。

Arp 142は、うみへび座の方向、3億2600万光年の距離にあります。ペンギンにあたる銀河NGC 2936は渦巻銀河が変形したもの、卵にあたる銀河NGC 2937は楕円銀河です。

これら2つの銀河は、7500万年前〜2500万年前に初めて接近。それが引き金となり、ペンギン銀河では急速な星形成が始まりました。私たちが住む天の川銀河では1年に6〜7個の新たな星が形成されますが、ペンギン銀河では1年に100〜200個の星が形成されています。

また重力の影響で、ペンギン銀河は大きく変形しました。ペンギンの目の部分が銀河中心です。一方、卵の楕円銀河は古い星が多く、ガスや塵が少ないため「潮汐の尾」が形成されていません。

ペンギンの銀河の方が、卵の楕円銀河に比べて大きく見えますが、両者の質量はほぼ同じです。ウェッブ望遠鏡のWebページでの説明によれば、このことが、ペンギンと卵がまだ合体していない理由の1つ。どちらかの質量が小さければ、もっと早く合体していた可能性があるとのことです。

ペンギンと卵の間の距離は10万光年ほどと推定されています。天の川銀河とアンドロメダ銀河の間の距離(約250万光年)と比べると、非常に近くに位置しています。

なお画像右上に銀河PGC 1237172がみえていますが、こちらはArp 142とは関係ありません。PGC 1237172は、Arp 142よりも地球に近く、約1億光年の距離にあります。

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ハッブル宇宙望遠鏡の画像との比較

こちらは2013年にハッブル宇宙望遠鏡が可視光で撮影したArp 142の画像(左)と、ウェッブ望遠鏡が近赤外線でとらえた画像を並べた物です。

ハッブル望遠鏡の画像では、ペンギンのクチバシから背中のあたりにかけて、塵の帯が暗く見えています。この塵の帯は、ウェッブ望遠鏡の画像ではかすかにしか見えていません。

またハッブル望遠鏡の画像では、ペンギンのクチバシの先と卵の間は、はっきりと分かれています。一方、ウェッブ望遠鏡の画像では、ぞれらの間がうっすらと明るく見えています。これは重力の影響で引きずり出された星やガス、塵です。

背景を見ると、ハッブル望遠鏡の画像と比べて、ウェッブ望遠鏡の画像には非常に多くの遠方銀河が映り込んでいるのがわかります。

(参考)まるで卵を抱えたペンギン 〜 ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた相互作用銀河Arp 142

こちらの動画は、ウェッブ望遠鏡の近赤外線の画像をもとに、3次元的に視覚化したものです。Visualization: NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI), Joseph DePasquale (STScI), Christian Nieves (STScI), Joseph Olmsted (STScI), Alyssa Pagan (STScI), Frank Summers (STScI), Greg Bacon (STScI)

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中間赤外線でとらえたArp 142

こちらはウェッブ望遠鏡のMIRIで撮影された画像です。中間赤外線では主に、低温の古い天体や塵などが映し出されます。近赤外線の画像と比べてこの画像では、楕円銀河が非常にコンパクトに見えています。楕円銀河ではガスや塵がほとんど失われており、中間赤外線では楕円銀河の中の最も古い星だけが見えています。

ペンギンの形は比較的変わっていません。MIRIの画像で青く見えているのは、PAH(多環芳香族炭化水素)という、すす状の分子です。

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

(参照)Webb Space TelescopeESA/Webb