この画像には銀河団MACS J0416.1-2403(MACS0416)が映っています。画像はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線画像とハッブル宇宙望遠鏡の可視光画像を合成したものです。0.4〜5μmの波長で撮影された画像が合成されています。
MACS0416は地球から約43億光年の距離にあります。そこでは2つの銀河団が衝突しており、最終的には一つの巨大な銀河団になると見られています。画像には銀河団に属する銀河のほか、銀河団より遠方にある銀河や、銀河団の重力レンズによって歪んだり長く伸びたりした遠方銀河の像も多数みられます。
この画像では最も青く見える銀河は比較的近くにあり、赤く見える銀河は比較的遠くにあります。一部の銀河は、星の光の青色を吸収しやすい大量の塵を含んでいるため非常に赤く見えています。
「モスラ」とニックネームをつけられた突発天体
ウェッブ望遠鏡によるMACS0416の観測は、数週間おきに複数回行われました。研究チームの目的は、「突発天体」と呼ばれる明るさが変化する天体を探すことでした。14個の突発天体が見つかり、そのうちの12個は、銀河団の重力レンズによって大きく拡大された3つの銀河に位置しており、一時的に非常に拡大された星や多重星系ではないかとみられています。あとの2個の突発天体は、ほどほどに拡大された背景銀河内にあり、超新星ではないかとみられています。
特定された突発天体の中で注目の天体が1つあります。その天体はビッグバンから約30億年後に存在していた銀河にあり、少なくとも4000倍に拡大されています。研究チームは、その星系に「モスラ(Mothra)」というニックネームをつけました(以前、「ゴジラ」とニックネームをつけられた重力レンズ天体もあります)。
「モスラ」は、9年前に観測されたハッブル望遠鏡の画像にも映っていました。星をこれほど拡大するには、銀河団と奥にある星の位置関係が絶妙なものである必要があります。星と銀河団はたがいに動いていますので、時間とともにその絶妙な位置関係は解消されるはずです。
それにもかかわらず何年にもわたり見えているのは、前景の銀河団の中に、倍率を増加させる天体が存在している可能性が高いからだとみられています。研究チームは、その天体の質量が太陽の1万〜100万倍と考えています。暗すぎる球状星団である可能性が考えられていますが、今のところ正体は不明です。
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, J. Diego (Instituto de Física de Cantabria, Spain), J. D’Silva (U. Western Australia), A. Koekemoer (STScI), J. Summers & R. Windhorst (ASU), and H. Yan (U. Missouri)