NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機DARTは、2022年9月27日(日本時間)に小惑星ディモルフォスへの衝突に成功しました。その際、DARTが衝突する前後のディモルフォスを、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡とがタッグを組んで観測しました。ウェッブ望遠鏡とハッブル望遠鏡が、同じ天体を同時観測したのは今回が初めてです。
DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験機)は、探査機を衝突させて小惑星の軌道変える技術の実証実験を行うことが目的のミッションです。DARTが衝突した小惑星ディモルフォスは、小惑星ディディモス(直径780m)の周りを回る直径160mの小惑星です。
ウェッブ望遠鏡の撮影画像
この画像はウェッブ望遠鏡がNIRCam(近赤外線カメラ)で撮影したものです。DARTによる衝突の約4時間後に撮影されました。画像にはコンパクトな中心部と、衝突で生じた噴出物が映っています。画像は0.7μmの波長で得られたもので、擬似的に赤色に着色されています。
今後数か月間、ウェッブ望遠鏡のNIRCamとMIRI(中間赤外線装置)を使って、ディモルフォスからの噴出物をさらに詳しく観測する予定とのことです。また分光観測を行うことで、小惑星の化学組成に関する情報が得られることも期待されています。
こちらのアニメーションは、衝突直前の画像から衝突5時間後の画像までのタイムラプスとなっています。衝突場所から噴出するプルームや急速に明るくなる領域などが確認できます。
ハッブル望遠鏡の撮影画像
これらはハッブル宇宙望遠鏡がWFC3(広視野カメラ3)でとらえたもので、左から衝突22分後、5時間後、8.2時間後に撮影された画像です。衝突による噴出物が時間とともに広がっているのが映っています。
ハッブル望遠鏡の画像から、この小惑星系は衝突後に明るさが3倍になったと推測されています。また衝突後8時間が経過しても明るさは一定に保たれていました。
こちらは3枚の画像をアニメーションにしたものです。
ハッブル望遠鏡は今後3週間にわたりさらに10回、ディディモス-ディモルフォス系の観測を行い、噴出物が時間の経過とともにどのように変化するのかを追いかけることになっています。
ウェッブ望遠鏡とハッブル望遠鏡の観測データと組み合わせることで、ディモルフォスの表面の性質や、衝突によって噴出した物質の量や速度に関する情報が得られるとみられています。
(参照)Hubblesite