金星のキホン 〜 分厚い大気による温室効果で表面は470℃の灼熱地獄 | アストロピクス

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金星のキホン 〜 分厚い大気による温室効果で表面は470℃の灼熱地獄

太陽系の惑星についての基本的な事柄を不定期で紹介していくシリーズの第2弾。今回は金星を紹介します。金星は太陽系第2惑星で、地球の1つ内側を公転しています。「明けの明星」「宵の明星」としても知られる惑星です。

NASAの金星探査機マゼランがレーダーで観測した金星。Image Credit: NASA/JPL
NASAの金星探査機マゼランがレーダーで観測した金星。Image Credit: NASA/JPL
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243日かけてゆっくりと自転する

金星は太陽系で内側から2番目の軌道を公転する惑星です。地球の1つ内側を公転しています。

金星の半径は6052kmで、地球(半径6371 km)と似た大きさをしています。太陽からの平均距離は1億800kmで、これは太陽〜地球間の約0.7倍の距離(約0.7天文単位)になります。

横倒しの天王星を除くと、金星以外の惑星は北から見て反時計回りに自転しています。しかし金星の自転方向はその逆で、北から見て時計回りになっています。自転速度は非常にゆっくりで、1回転するのに243日かかります。金星の公転周期(太陽を1周する期間)は225日なので、金星は自転周期の方が公転周期より長いのです。ただ金星は公転とは反対方向に自転しているため、日の出から次の日の出までの1昼夜は117日になります。

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分厚い大気の上空には硫酸の雲

NASAのマリナー10号が撮影した金星画像。画像について詳しくはこちら。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
NASAのマリナー10号が撮影した金星画像。画像について詳しくはこちら。Image Credit: NASA/JPL-Caltech

金星は、主に二酸化炭素からなる分厚い大気に包まれており、上空には硫酸の雲が浮かんでいます。金星全体を覆うその雲が太陽光をよく反射するため、地球から見てとても明るく輝いて見えます。

分厚い大気による温室効果のため、金星表面は470℃以上にもなります。水星よりも太陽から遠いにもかかわらず、金星の方が表面温度は高いのです。

金星自体は243日かけて非常にゆっくりと自転していますが、一方で金星上空には時速360kmもの風が吹いており4日間で金星を1周します。自転速度に対して非常に速いこの風は「スーパーローテーション」と呼ばれています。

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表面には火山や溶岩流が多く見つかっている

巨大な円形地形コロナ。画像について詳しくはこちら。Image Credit: NASA/JPL
巨大な円形地形コロナ。画像について詳しくはこちら。Image Credit: NASA/JPL

金星では5億年前〜3億年前に大規模な火山活動が起き、表面のほとんどが更新されたと考えられています。多くの火山や溶岩流の跡が見つかっています。「コロナ」と呼ばれる巨大な円形地形や、パンケーキ状のドームなど独特の地形も存在しています。

金星には「アフロディテ大陸」「イシュタル大陸」と呼ばれる2つの広大な高地が存在しています。アフロディテ大陸は赤道をまたいで広がっており、南アメリカ大陸ほど大きさがあります。一方のイシュタル大陸はオーストラリア大陸ほどの大きさで北極にあります。イシュタル大陸には金星の最高峰マクスウェル山(高さ8.8km)があります。

金星表面にはクレーターも見つかっていますが、1.5〜2km以下の大きさのクレーターはありません。分厚い大気のために、小さな隕石は途中で燃え尽きてしまい地表まで到達しないのです。

金星探査機

2000年ごろまでを中心に、金星には多くの探査機が送り込まれてきました。ここでは主な探査機を紹介しましょう。

1960年代から80年代にかけて打ち上げられた金星探査機は、アメリカとソ連によるものでした。他の惑星への着陸というと火星を思い浮かべるかもしれませんが、最初に着陸に成功したのは火星ではなく金星でした。1970年、ソ連のベネラ7号は金星表面への着陸に成功、短時間(23分間)ながらデータを送信してきました。

金星は惑星全体が厚い雲に覆われているため、可視光では宇宙から表面を見ることができません。1990年から94年まで金星を周回しながら探査したNASAのマゼラン探査機は、レーダーを使って金星表面の98%を観測することに成功しました。

21世紀に入ると、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のビーナス・エクスプレスや、日本の「あかつき」などが金星に向かいました。どちらも主な目的は、金星の大気の観測です。ビーナス・エクスプレスは2006年から2014年まで周回しながら観測を行いました。一方「あかつき」は2015年に金星の周回軌道に入り、現在も観測を続けています。スーパーローテーションの維持メカニズムを解明するなどの成果を上げています。

2021年6月、NASAはDAVINCI+(ダビンチプラス)とVERITAS(ベリタス)という2機の金星探査機を2028〜30年に打ち上げることを発表しました。また同じく2021年6月、ESAは金星探査機EnVisionを2030年代初めに打ち上げると発表しました。2030年前後に金星へ3機の探査機が向かうことになります。

(参照)NASA Solar System Exploration