NASA、2機の金星探査機を2028〜30年に打ち上げへ | アストロピクス

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NASA、2機の金星探査機を2028〜30年に打ち上げへ

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2021年6月3日、ディスカバリー計画の新たなミッションとして2機の金星探査機を選定したと発表しました。1つは「DAVINCI+(ダビンチプラス)」、もう1つは「VERITAS(ベリタス)」です。今回選ばれた2つの金星探査機は、2020年2月に選ばれた4つの候補の中から選定されたもので、2028〜30年に打ち上げられる予定になっています。

NASAのディスカバリー計画は1992年にスタートした太陽系探査計画で、(NASAとしては)低コストと短い開発期間で多くのミッションを進めようというものです。現在稼働中の探査機としては月探査機ルナー・リコネッサンス・オービターや火星着陸機インサイトなどがあります。

金星は地球と似たような大きさの惑星です。ただその表面の様子は地球とは全く異なります。金星は二酸化炭素を主成分とする分厚い大気に包まれ、表面付近の気圧は地球の90倍(90気圧)以上にもなります。大気の温室効果により表面の温度は470℃もあります。また上空は全球的に濃硫酸の雲に覆われています。

ただし金星はかつて海があって生命が存在しえたとも考えられています。今回選定されたミッションは、温暖で海が存在する居住可能な環境だった可能性のある金星が、なぜ現在のような環境に変わってしまったのかを解明することを目的としています。

(参考記事)金星は30億年間、居住可能な惑星だった?

DAVINCI+の想像図。Credit: NASA GSFC visualization by CI Labs Michael Lentz and others
DAVINCI+の想像図。Credit: NASA GSFC visualization by CI Labs Michael Lentz and others

DAVINCI+(Deep Atmosphere Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging)は、そのような金星大気の中に、直径1mほどのプローブを降下させます。金星大気の組成を測定することで、かつて居住可能だったか、どうして現在のような環境になったのかを探ろうとするものです。雲を突き抜けてから金星表面を撮影するための撮像装置も搭載されています。

周回機には4つのカメラを備えた観測機器「VISOR」が搭載されており、紫外線や近赤外線で大気中の雲の動きや地表からの熱などを観測します。

VERITASの想像図。Credit: NASA/JPL-Caltech
VERITASの想像図。Credit: NASA/JPL-Caltech

VERITAS(Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography & Spectroscopy)は金星を周回しながら、合成開口レーダーを使って金星表面を観測します。金星のほぼ全域にわたり地表の高度を測定し3次元地図を作ります。

VERITASはまた、金星表面からの赤外線放射を観測して岩石の種類を調べたり、活火山が大気中に水蒸気を放出しているかどうかを調べたりします。金星の内部構造を調べるため、惑星の重力場の観測も行います。これらの観測を通じて、金星のプレートテクトニクスや火山活動などについて探っていきます。

(参照)NASA(1)(2)JPL