気球を使って地震を検出! 将来の金星での地震探査に向けた技術開発が進む

地球の一つ内側を公転する金星は、大きさや密度が地球と似ており、「双子星」と呼ばれることもあります。その金星では、火山活動や地震は起きているのでしょうか。

金星の表面は気圧が高く(約90気圧)、大気による温室効果のため気温は460℃以上にもなります。地球上で地震を観測するには地震計が使われますが、金星表面の過酷な環境では、地震計を長期間にわたり運用できません。そこでNASA(アメリカ航空宇宙局)・JPL(ジェット推進研究所)やCaltech(カリフォルニア工科大学)の研究者が開発を進めているのが、気球によって地震を検出する技術です。地震波が地中から大気中に移ると音波が発生します。その音波を高感度の気圧計でとらえることで地震を検出するのです。

カリフォルニアで地震波に由来する音波をとらえるために飛ばされた気球。
カリフォルニアで地震波に由来する音波をとらえるために飛ばされた気球。

研究チームは、2019年7月にカリフォルニアで発生した地震の際に、気球に搭載した気圧計で低周波の音響振動を検出しました。地上に設置された地震計が、約80km離れたところで発生したマグニチュード4.2の地震を記録した約32秒後、高度約4.8kmにいた気球が音響振動をとらえたのです。コンピューターモデルやシミュレーションと比較分析を行い、自然発生した地震を検出したことを初めて確認しました。

金星の大気は地球と比べて非常に高密度なため、音波ははるかに効率的に伝わります。金星表面に比べ、高度50〜60kmの環境は比較的おだやかで、センサーは60日(地球日)以上の寿命が達成可能であることが示唆されています。金星の大気に気球を飛ばすこと自体は、1980年代にすでに旧ソ連のベガ計画で実現されています。2機のベガミッションの気球は、46時間以上にわたりデータを送信してきました。

研究チームでは、金星のホットスポットや、軌道上から見て火山に見える場所の上空に気球を飛ばし音波を観測することで、火山が活動しているかどうかを判断できると考えています。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech

(参照)NASA