ESAの金星探査機EnVision、2030年代初頭に打ち上げへ | アストロピクス

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ESAの金星探査機EnVision、2030年代初頭に打ち上げへ

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の科学プログラム委員会(Science Programme Committee)は6月10日、ESAのMクラス(中規模)ミッションとして金星探査機EnVision(エンビジョン)を選定しました。2030年代の早い時期に打ち上げることを目指しています。

2028〜2030年の打ち上げを目指すNASA(アメリカ航空宇宙局)の金星探査機DAVINCI+(ダビンチプラス)とVERITAS(ベリタス)が先日選定されたばかりですが、それらに続きESAも金星を目指すことになりました。2030年前後に3機の探査機が金星へ向かうことになります。(参考記事)NASA、2機の金星探査機を2028〜30年に打ち上げへ

金星は大きさや密度が地球と似ており、「双子星」と表現されることもあります。しかし金星は表面付近では90気圧にもなる分厚い大気に包まれ、上空は硫酸を多く含む雲に覆われています。大気の主成分は二酸化炭素で、温室効果により表面温度は470℃にも達します。金星表面の環境は地球とはかなり異なっているのです。

金星が現在の状態になるまでにどのような歴史をたどってきたのでしょうか、そして地球もそのような運命をたどる可能性があるのでしょうか? 金星はいまだに地質学的に活動しているのでしょうか? 金星にはかつて海があり生命が存在し得たのでしょうか? EnVisionはこれらの疑問に対する答えを求め金星に向かいます。

EnVisionには、地下構造を探るためのレーダーサウンダー、大気や地表を調べるための分光器、地表の地図を作成するための合成開口レーダーなどが搭載されます。レーダーサウンダーと分光器はESA製で、合成開口レーダー(VenSAR)はNASAが提供します。さらに電波科学実験では、金星の内部構造と重力場、そして大気の構造と組成を調査することになります。金星の内部、表面、大気を調べることで、惑星全体の謎に迫ります。

VenSARは事前に選定された対象領域を1ピクセルあたり30mの解像度で、一部の対象領域については1ピクセルあたり10mの解像度で金星表面を撮像します。1990年代に金星を探査したNASAのマゼラン探査機は、1ピクセルあたり120mの解像度で金星表面を観測しました。EnVisionはマゼラン探査機よりはるかに高い解像度で観測を行うことになります。

ESAによればEnVisionの打ち上げは早ければ2031年で、その他にも2032年と33年に打ち上げられる可能性があるとのことです。

Image Credit: NASA / JAXA / ISAS / DARTS / Damia Bouic / VR2Planets

(参照)ESANASA