
この画像は、南米チリのセロ・パチョン山の山頂に建設されたベラ・C・ルービン天文台で試験観測中に撮影されたもので、おとめ座銀河団の一部の領域が映っています。おとめ座銀河団は、地球から約5500万光年離れたところにある、天の川銀河に最も近い大規模な銀河団です。
画像には、赤から青までさまざまな色の明るい星や、比較的近くにある青い渦巻銀河から遠方にある赤い銀河群まで、驚くほど多様な天体が映っています。ここには約1000万個の銀河が映っていますが、ルービン天文台では南天の全天を同じレベルの詳細さで撮影します。

こちらの画像は、冒頭の画像に天体名を書き加えたものです。

こちらは冒頭の画像の左上の一部の領域を拡大表示したものです。右下側に大きく映る2つの渦巻銀河はNGC 4411b(左)、NGC 4411a(右)です。2つの銀河は近距離にありますが、渦状腕のゆがみなど相互作用の兆候は見られません。これらの銀河の上側には、複数の銀河が相互作用している銀河群RSCG 55が映っています。一見すると3つの銀河に見えますが、実際には4つの銀河からなり、相互作用によって引き寄せられた星やガス、塵によってつながっています。(参考)相互作用により間に「橋」がかかる4つの銀河 ダークエネルギーカメラで撮影

こちらは冒頭の画像の左端付近にある棒渦巻銀河NGC 4519です。NGC 4519の真上に、伴銀河であるレンズ状銀河PGC 41706も映っています。

こちらは冒頭の画像の右側にみられる領域です。画像上側で最も目立っているのは楕円銀河NGC 4261です。そのほかに、さまざまな形をした銀河が数多く見られます。

こちらは冒頭の画像の右下側にある渦巻銀河NGC 4378。この銀河は、渦状腕が1本しかないことで知られています。
ルービン天文台では2025年後半から大型プロジェクトを開始
ルービン天文台に設置されている口径8.4mの光学赤外線望遠鏡には、32億画素の史上最大のデジタルカメラ「LSSTカメラ」が搭載されています。8m級の望遠鏡としては最大の視野があり、満月45個分の範囲を一度に観測できます。
ルービン天文台では、2025年後半から「時空間レガシーサーベイ(Legacy Survey of Space and Time: LSST)」をスタートします。このプロジェクトでは、10年間にわたり南半球の空全体を繰り返し撮影します。ダークマターやダークエネルギーの謎に迫るほか、天の川のマッピングも行います。また数夜ごとに空全体を観測するので、遠方の星に対して移動する太陽系内の天体(小惑星や彗星など)や、時間の経過とともに明るさが変わる天体(超新星爆発や変光星など)なども新たに発見・観測されると期待されています。
(参考)史上最大のデジタルカメラでとらえた干潟星雲と三裂星雲 ベラ・C・ルービン天文台が初画像を公開
Image Credit: RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA
(参照)NOIRLab