この画像はハッブル宇宙望遠鏡のACS(掃天観測用高性能カメラ)によって2005年に撮影されたもので、「ブーメラン星雲」と呼ばれるガスと塵の雲(原始惑星状星雲)が映っています。ブーメラン星雲はケンタウルス座の方向、約5000光年の距離にあります。
なおブーメラン星雲の名前は、1980年に地上の望遠鏡から観測された際にブーメランの形のように見えたことに由来しています。ただハッブル宇宙望遠鏡がとらえた高解像度画像を見ると、ブーメランというよりはむしろ蝶ネクタイのような形をしていることがわかります。
ブーメラン星雲では、中心の星から放出された物質がほぼ対称的な2つの円錐を形成しています。星雲の中心星は年老いた赤色巨星で、星の外層のガスが放出されていると考えられています。中心星からは、過去1500年間に太陽の約1.5倍の質量が失われました。
それぞれの円錐は長さ1光年近くあります。星雲全体としては2光年ほどあり、これは太陽から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまでの距離の半分ほどに相当します。
このブーメラン星雲は、宇宙で最も低温の天体として知られています。1995年に行われたサブミリ波での電波観測から、その温度はおよそマイナス272℃(絶対温度1K)であることがわかりました。
こちらはWFPC2(広視野惑星カメラ2)を使って1998年に撮影されたものです。
Main Image Credit: NASA, ESA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: J. Biretta (STScI)
(参照)Hubblesite(1)、(2)