
この画像は「赤蜘蛛星雲」とも呼ばれる惑星状星雲NGC 6537を、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がNIRCam(近赤外線カメラ)でとらえたものです。
惑星状星雲は、太陽と同じくらいの質量の星の最期の姿です。恒星は年老いるとふくらんで赤色巨星になります。やがて赤色巨星の外層のガスが宇宙空間へ放出されて広がります。中心に残された星の「芯」からの紫外線が、周囲に広がったガスを電離して輝くのが惑星状星雲です。
泡のような構造が両方向にそれぞれ3光年にわたり広がる
画像には星雲の中心星も映っています。ウェブ望遠鏡の観測から、その中心星がきわめて高温で明るいことが判明しました。星は一つしか見えませんが、そこには伴星が潜んでいる可能性があります。伴星の存在により、赤蜘蛛星雲の形状が説明できるかもしれません。赤蜘蛛星雲のような砂時計状の形は、「バタフライ星雲」とも呼ばれるNGC 6302など、ほかの惑星状星雲にも見られます。
画像では、二つの水素原子が結合したH2分子から放射される光が青色で示されています。その広がりは、右上と左下の両方向にそれぞれ約3光年にわたり閉じた泡のような構造になっています。星雲の中心から噴き出すガスが、数千年にわたりこの巨大な泡をふくらませてきました。
星雲の中心付近に見られる紫色の「S」字の構造は、電離した鉄原子からの光によるものです。これは、星雲の中心星付近から高速のジェットが噴出し、先に星から放出されていた物質と衝突した場所を示しています。
(参考)
秒速数千kmの星風でガスが波打つ「赤蜘蛛星雲」 ハッブル望遠鏡が撮影
バタフライ星雲の中心部をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた
ウェッブ望遠鏡のウェブページでは毎月、「Picture of the Month(今月の1枚)」の画像を公開しています。今回紹介した画像は2025年10月28日にPicture of the Monthとして掲載されたものです。
(参考)「ウェッブ望遠鏡Picture of the Month」記事一覧
Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. H. Kastner (Rochester Institute of Technology)
(参照)ESA/Webb

大宇宙 写真集500【改訂新版】
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がみた宇宙【改訂版】