木星のエウロパ表面で生成される酸素が、従来考えられていたよりもかなり少ないとする研究結果が発表されました。
プリンストン大学のJamey Szalay氏らの研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の木星探査機ジュノーの観測データから、エウロパ表面で生成される酸素の量を毎秒12kgと推定しました。従来の推定では最大で毎秒1000kg以上の酸素が生成されるとみられていました。
木星には「ガリレオ衛星」と呼ばれる4つの大きな衛星があります。エウロパの半径は約1560.8kmで、その4大衛星の中では最小の天体です。表面は氷の地殻に覆われていますが、その地下には広大な海が潜んでいると考えられています。海には生命を支える環境が存在する可能性もあるとみられています。
ジュノー探査機が木星磁場に運ばれたイオンを測定
エウロパの公転軌道は、木星の放射線帯のちょうど中央に位置しています。木星からの荷電粒子がエウロパの表面に衝突し、氷を構成する水分子を水素と酸素に分解します。表面で生成された酸素は、その一部がエウロパの地下海に流入し、生命の代謝エネルギー源となる可能性があると考えられています。
ジュノー探査機は、2022年9月29日にエウロパから354kmまで接近しました。その際、JADE(Jovian Auroral Distributions Experiment、木星オーロラ分布実験装置)を用いて、エウロパを通り過ぎる木星の磁場によって運ばれた水素イオンと酸素イオンを測定。そのデータをもとに、エウロパ表面で生成される酸素の量が推定されました。
エウロパでの酸素の生成は、2030年に木星到着を目指すNASAのエウロパ・クリッパーミッションでも調査されます。このミッションでは、エウロパが生命に適した条件をもつかどうかを判断するための9つの科学機器からなるペイロードが搭載されます。
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(参照)NASA