金星は30億年間、居住可能な惑星だった?

Image Credit: NASA/JPL(左)、NASA(右)

地球の一つ内側を公転する金星は、大きさや化学的組成が地球と似ており、「兄弟星」といわれることもあります。しかし現在の金星の表面は90気圧もあり、二酸化炭素を主成分とする大気の温室効果によって表面は470℃にもなる灼熱の環境になっています。

過去の金星に関しては、主に次の二つのシナリオが考えられています。

一つは金星にはもともと二酸化炭素と水蒸気の大気があり、マグマオーシャン(マグマの海)が1億年ほど続いていたとするものです。太陽光によって水蒸気の分子が水素(H2)と酸素(O)に分解される過程が1億年続くと、H2は全て宇宙空間へ逃げ、Oは全てマグマの海に吸収されます。

もう一つのシナリオは、金星の大気は二酸化炭素と水蒸気で同じですが、マグマの海が数百万年しか続かないとするものです。マグマの海が短期間で冷え、分解されずに残った水蒸気が凝縮して金星表面で液体の海となります。

NASAゴダード宇宙科学研究所(GISS)の研究チームは、金星表面の地形、表面気圧や大気組成、日射量、自転速度などを元に気候モデルを使って45通りのシミュレーションを行いました。その結果、初期の金星表面に液体の水があれば、30億年近くの間、ハビタブル(居住可能)な環境を保っていた可能性があることが示されたとのことです。

冒頭の画像は、マゼラン探査機がとらえた現在の金星表面(左)と海があった頃の金星の想像図(右)です。研究チームでは、金星の最初の数億年の進化をより詳しく調べて、水が表面に凝縮したのかどうかを理解したいとしています。また金星表面が温和な状態から、温室効果が暴走した現在の状態に至ることが可能かどうかを調べることも計画しているとのことです。

(参照)NCCS