木星のトロヤ群小惑星を目指す探査機ルーシー

Credit: Southwest Research Institute
Credit: Southwest Research Institute

木星のトロヤ群小惑星を目指すNASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機ルーシーが、2021年10月16日18時34分に打ち上げられました。

木星の公転軌道上で、木星の進行方向とその逆側に小惑星群が存在することが知られており「トロヤ群小惑星」と呼ばれています。トロヤ群小惑星が存在するのは「ラグランジュ点(L点)」と呼ばれる地点の周辺です。木星に先行する側が「L4」、後ろ側が「L5」と呼ばれます。

ルーシーは、その木星のトロヤ群小惑星を探査するはじめての探査機です。トロヤ群小惑星は、木星など外惑星が形成された際の始原的な物質の残骸であると考えられており、太陽系の歴史をひも解くための重要な手がかりが隠されていると見られています。

ルーシーは、合計7個のトロヤ群小惑星に接近しながら観測を行い、表面の地質や色・組成の観測、質量や密度の測定などを行います。

トロヤ群小惑星に含まれる、C型、P型、D型という3つの主なタイプの小惑星を、ルーシーは間近から観測することになります。P型とD型のトロヤ群小惑星は、海王星以遠にあるエッジワース・カイパーベルトに存在する天体に似ています。C型の小惑星は、火星と木星の間にある小惑星帯の外側部分で多く見られます。

ルーシーの航路と訪問予定の小惑星

Credit: NASA's Scientific Visualization Studio

こちらはルーシーの動き(軌道)を示した動画です。木星を固定したときのルーシーの軌道です。3つの異なる視点から見たものになっています。右側が真上、左下が真横、左上が斜めから見たものです。

ルーシーは、2021年10月に打ち上げられ、2022年10月と2024年12月に地球で2回のフライバイを行ったのち、木星軌道へと向かいます。その旅の途中の2025年4月、小惑星帯にある小惑星ドナルド・ジョハンソン((52246)Donaldjohanson)に接近して観測します。

ドナルド・ジョハンソンはC型小惑星です。直径4kmほどしかなく、ルーシーの探査対象の中で最も小さい天体です。この小惑星の観測は、ルーシーの観測機器のリハーサルも兼ねて行われます。

その後ルーシーは、木星軌道のL4のトロヤ群小惑星に接近し観測を行います。2027年8月に最初に到達するのは、小惑星エウリバテス((3548)Eurybates)です。エウリバテスは直径64kmのC型小惑星です。2019年1月には1km前後の大きさとみられる衛星も発見されており、ともに観測される予定です。

2027年年9月には、小惑星(15094)Polymeleに到達します。この小惑星は直径21kmのP型小惑星で、ルーシーの観測対象となるトロヤ群小惑星の中では最も小さい天体です。

次にルーシーは、翌2028年4月に小惑星(11351)Leucusへ到達します。Leucusは直径40kmのD型小惑星です。1回の自転が446時間と、非常にゆっくりと回転しています。同じく2028年11月には、直径51kmのD型小惑星(21900)Orusを探査します。

その後ルーシーは、いったん地球軌道付近まで戻ったあと木星軌道のL5に向い、L5にあるトロヤ群小惑星(617) PatroclusとMenoetiusの二重小惑星へ2033年3月に接近します。これらは大型のP型小惑星で、Patroclusは直径113km、Menoetiusは直径104kmです。

Credit: Southwest Research Institute
Credit: Southwest Research Institute

こちらは木星を固定した状態で描いたルーシーの軌道(緑)です。

ルーシーの機体と観測機器

Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

ルーシーの機体は、全体の幅が16mほどあります。その大部分が、木星軌道への飛行の際に電力を供給するための2つの太陽電池パネルです。太陽電池パネルの直径は、それぞれ7.3mです。地球との通信用に、直径2mの高利得アンテナも搭載されています。

Lucy Press Kitより
Lucy Press Kitより

ルーシーには「L’LORRI」「L'Ralph」「L'TES」などの観測機器が搭載されています。

L’LORRIは高感度かつ高解像度のカメラです。表面が非常に暗いトロヤ群小惑星の画像を撮影するために使われます。1000kmの距離から、直径70mのクレーターをはっきりと見ることができます。冥王星や太陽系外縁天体アロコスなどを観測したニュー・ホライズンズ探査機に搭載された観測装置LORRIと、基本的な設計は同じものです。

L'Ralphには、「MVIC(Multispectral Visible Imaging Camera)」と「LEISA(Linear Etalon Imaging Camera)」という2つの装置が搭載されています。MVICは、小惑星のカラー画像を撮影するカメラで、表面の組成や活動の兆候を調べるために使われます。一方、LEISAは赤外線撮像分光器で、小惑星表面のケイ酸塩や氷、有機物などを示す吸収線を調べます。L'Ralphは、ニュー・ホライズンズ探査機と、小惑星ベンヌのサンプルを地球へ持ち帰るオシリス・レックスの観測装置をベースに改良を加えて製作されました。

L'TESは、小惑星表面の温度を測定する装置です。1日のうちの異なる時間帯の温度を測定することで、表面のレゴリスにどれくらいの塵や砂、石があるのかを推定するなどが可能になります。L'TESはオシリス・レックスに搭載されたOTESをベースに作られました。

そのほか、ナビゲーションカメラ(T2CAM)を用いて小惑星の形状を決定したり、高利得アンテナを用いて小惑星の質量を測定するための電波科学実験も行われる予定です。

なおルーシーには、未来の人類へ向けたメッセージが書かれた銘板が搭載されています。

※2021年10月16日の打ち上げに伴い、オリジナルの記事から一部の文章を変更しました。

(参照)LucyLucy PRESS KIT(PDF)