NASAの火星ヘリコプター、ローターブレードが損傷し運用を終了 | アストロピクス

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NASAの火星ヘリコプター、ローターブレードが損傷し運用を終了

2023年8月2日に探査車パーサヴィアランスが撮影したインジェニュイティ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
2023年8月2日に探査車パーサヴィアランスが撮影したインジェニュイティ。Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2024年1月25日、火星ヘリコプター「インジェニュイティ」の運用を終了したと発表しました。1月18日に行われた72回目の飛行時に撮影した画像から、ローターブレード(翼)の1つまたは複数が損傷しており、もはや飛行できない状態であることが判明したとのことです。

2021年4月4日に探査車パーサヴィアランスから分離されたインジェニュイティは、もともと30日間で最大5回の飛行試験を行う技術実証のために設計されていました。しかしインジェニュイティは4月19日の初飛行以来、当初の想定をはるかにこえて3年近くも稼働し続けてきました。合計72回の飛行を実施し、合計約17kmもの距離を移動、そして総飛行時間は2時間以上に及びました。

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72回目の飛行の着陸時に損傷が発生か

72回目の飛行後にインジェニュイティが撮影した画像。ローターブレードが損傷していることを示す影が映っています。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
72回目の飛行後にインジェニュイティが撮影した画像。ローターブレードが損傷していることを示す影が映っています。Image Credit: NASA/JPL-Caltech

1月18日に行われた72回目の飛行では、インジェニュイティは当初の計画通り高度12mまで上昇し、4.5秒間ホバリングした後で秒速1mで降下しました。その際、高度1mのところでパーサヴィアランスとの通信が失われました。翌日には通信が再確立され、飛行に関する詳細情報がNASA・JPL(ジェット推進研究所)の運用チームに届きました。その後届けられた画像により、ローターブレードが損傷していることが明らかになったのです。通信途絶の原因などは現在も調査中とのこと。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Image Credit: NASA/JPL-Caltech

こちらは2023年12月22日、70回目の飛行時にインジェニュイティが撮影したカラー画像です。高度12mから撮影されました。72回目の飛行では、この画像の右側付近で離着陸しました。インジェニュイティは、ナビゲーションカメラを使って岩などをとらえながら飛行を行います。運用チームは、上の画像に映っているような、あまり特徴のない地形が、着陸時の異常を引き起こした可能性があるとみています。

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インジェニュイティの過去の飛行映像

こちらはインジェニュイティの初飛行時の映像です。パーサヴィアランスから撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS (参考記事)火星の空中に浮かぶヘリコプター「インジェニュイティ」〜歴史的瞬間をとらえた動画が公開された

こちらは2023年8月3日に実施された54回目の飛行のようす。パーサヴィアランスから撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS (参考記事)探査車がとらえた火星ヘリの54回目の飛行映像

こちらは2023年9月16日に実施された59回目の飛行をとらえたもの。パーサヴィアランスが撮影した画像をもとに編集部で作成しました。パーサヴィアランスから撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU (参考記事)探査車から見た火星ヘリ59回目の飛行

(参照)Mars Exploration Program