これらの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたアトラス彗星(C/2019 Y4)です。上は2020年4月20日、下は23日に撮影されました。
アトラス彗星は2019年12月29日に、ハワイに拠点を置くロボット天文サーベイシステムATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System:小惑星地球衝突最終警報システム)によって発見されました。ATLASは2台の自律型望遠鏡で地球に接近する彗星や小惑星を探索する調査プロジェクトです。
アトラス彗星は3月中旬までに急速に明るくなり、5月には肉眼で観測できるようになるかもしれないと期待されていました。ところがその後、彗星は急に暗くなり、彗星の核がいくつかの破片に分裂したか、崩壊してしまったのではないかと推測されました。そして4月11日になって、アマチュア天文学者のJose de Queiroz氏によって核の3つの破片が撮影されました。
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた20日の画像からは約30個、23日の画像からは25個の破片が確認されました。わずか3日の間に彗星の核の見た目は大きく変化しています。ハッブルによるアトラス彗星の観測は2つの研究チームによって行われましたが、その一方のチームのリーダーであるDavid Jewitt氏は核の見た目の変化について、「それぞれの破片が太陽光を反射して点滅しているからなのか、日によって異なる破片が出現したからなのか、分かりません」と述べています。
今回の観測結果は、彗星の核の分裂がかなり一般的なことであることを示したものだと見られています。分裂の原因についてはよく分かっていません。1つの可能性としては、昇華した氷がガスとなって噴き出し、元の核が回転してバラバラになったと考えられています。
アトラス彗星は5月23日に地球から約1億1500万kmまで接近、その8日後には太陽から3700万kmまで接近します。
Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA), Q. Ye (University of Maryland)
https://spacetelescope.org/news/heic2008/
https://hubblesite.org/contents/news-releases/2020/news-2020-28