観測史上最も明るいガンマ線バーストが浮かび上がらせた塵のリング | アストロピクス

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観測史上最も明るいガンマ線バーストが浮かび上がらせた塵のリング

2022年10月9日、観測史上最も明るいとみられるガンマ線バースト「GRB 221009A」が、NASA(アメリカ航空宇宙局)のスウィフト衛星(ニール・ゲーレルズ スウィフト天文台)により検出されました。このガンマ線バーストは、地球から約19億光年離れたところで発生したものと見られています。

画像は、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線天文衛星XMM-Newtonが、GRB 221009A検出の2日後と5日後に行なった観測を合成したものです。明るいリングが幾重にも同心円状に見えています。これらのリングはいずれも、天の川銀河の中にある塵に、ガンマ線バーストで発生したX線が散乱したものです。

最も外側のリングは、地球から約1300光年離れた場所にある塵の雲でX線が散乱したもの。一方、最も内側のリングは約6万1000光年の距離にある塵にX線が散乱して明るく見えています。約19億年前にGRB 221009Aで発生したX線が、6万1000年前に天の川銀河内の塵で散乱した光と、約1300年前に塵で散乱した光が見えているのです。X線が塵の雲に遭遇するたびに、X線の一部が散乱して、同心円状のリングが作られました。このようなリングを伴うガンマ線バーストはGRB 221009Aが7例目です。これまでの例と比べると3倍の数のリングが映っています。

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超新星が見つからない

ハッブル宇宙望遠鏡が、GRB 221009Aの赤外線残光(赤い円)をとらえた画像。2022年11月8日と12月4日に撮影された画像を合成したもの。Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, A. Levan (Radboud University); Image Processing: Gladys Kober
ハッブル宇宙望遠鏡が、GRB 221009Aの赤外線残光(赤い円)をとらえた画像。2022年11月8日と12月4日に撮影された画像を合成したもの。Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, A. Levan (Radboud University); Image Processing: Gladys Kober

研究者はGRB 221009Aを「BOAT(brightest of all time)」と呼んでいます。分析の結果、これまで見られたものよりも70倍も明るいことがわかりました。このような規模のガンマ線バーストは、数千年に1回とも、1万年に1回ともいわれています。

GRB 221009Aは継続時間が比較的長いロングガンマ線バースト(継続時間は2秒間)でした。大質量星の核が重力崩壊してブラックホールが誕生する際に発生したものと考えられています。このタイプのガンマ線バーストでは、のちに超新星が発見されることが多いのですが、GRB 221009Aでは見つかっていません。天の川銀河の塵によって、超新星の光が地球に届くのを邪魔されているのかもしれません。現在、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を使い、近赤外線と中間赤外線で観測が行われています。ただ星があまりに巨大だったため、爆発するのではなく、星全体がブラックホールに落ち込んでしまった可能性もあるようです。

Main Image Credit: ESA/XMM-Newton/M. Rigoselli (INAF)

(参照)NASAESA